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2018 年度 実施状況報告書

ビヘイビアコンポーズドによるカンブリア紀古代魚の複合・複雑行動の獲得

研究課題

研究課題/領域番号 18K04039
研究機関北見工業大学

研究代表者

渡辺 美知子  北見工業大学, 工学部, 准教授 (50509289)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード人工生命 / 物理エンジン / 人工ニューラルネットワ(ANN)ーク / 遺伝的アルゴリズム(GA) / 自律行動 / 協調行動 / 機械学習 / ビヘイビアコンポーズド
研究実績の概要

古代魚の運動行動に関する研究はほとんど見つけることができず,なんら物理的な根拠のない現存する生物の行動を模倣しているのが現状である.ある環境下で古代魚を物理モデルとしてその行動を物理法則に基づいて解明しようとするのは,生物分野においては不可能と思われる.更に,古代魚の形態は現存する魚類とは異なる形態のため,本研究を実施することにより,新しいロボットの形態及び運動行動様式を得られる可能性もある.
機械学習の分野では深層学習(CNN)が現在のトレンドであるが,CNNは教師あり学習であり,現存する生物の運動行動を教師信号とすることは,古代魚の独自の行動を獲得するには不適格である.むしろ,個体発生が系統発生を繰り返すような行動獲得方式が必要であり,そのためにはプリミティブな行動をより高次で組み合わせて制御する方式が望ましい.このような方法論として,複合・複雑行動を獲得できるビヘイビアコンポーズドと呼ぶEANNを組み合わせた新しい行動獲得法を提案して研究を進めている.
行動獲得に関する研究はChaumontのCatapultsの研究があるが,その多くは,プログラミングベース,規則ベース,ニューロイボリューション(NE)に基づいて行われている.特に,遺伝的アルゴリズム(GA)と人工ニューラルネットワーク(ANN)を組み合わせたNEは単一行動の獲得には頻繁に使用されるが,複合・複雑行動の獲得を行うことはできないでいる.本研究では,NEの行動獲得の利点を生かしたまま,複合・複雑化された行動を復元可能にする方法論として提案してきたビヘイビアコンポーズド(BC)を発展させ,現状では地球上に見られない形態の古代魚の行動獲得を実現することである.また,古代魚の形態は現存する魚類とは異なる形態のため,本研究を実施することにより,新しいロボットの形態及び運動行動様式を得られる可能性がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに行った研究は,1)体が節構造を持ち鼻緒のとれた草履のような形で尺取り虫のような動きで陸上を移動するオドントグリフィスモデル,2)細長いソーセージのような胴体と胴体から下側に細長い7対の足,胴体上側に外的から身を守る多数のトゲがあり細長い7対の足で海中を足の運びの位相を考慮しながら歩行するハルキゲニアモデル,3)胴体の両側に突きでた泳ぐための多数のヒレ,頭から突き出た左右の眼,獲物を捕らえるための二本の腕を持ち,胴体の両側に突き出た泳ぐための多数のヒレで遊泳するアノマロカリスモデル,など単一タスク単一行動の獲得実験を行なっている.これらの古代生物は,陸上や海中移動あるいは遊泳という単一のタスクを実現するニューロイボリューションの結果である.これは,単に遊泳という一つの行動獲得を行うのではなく,遊泳であっても身体の泳動,推進力を利用した単なる慣性による前進,ヒレによる遊泳,等の複数の行動を自身と環境の状況に合わせて選択しながら行動する複雑な行動獲得を目指すものである.
本年度は,階層型EANNが複合行動の獲得に有効であるかを生物の移動や遊泳をする人工の古代生物モデルを用いて検証した.ビヘイビアコンポーズドの構成を行った場合,単一な行動獲得を行うよりも早く学習が終えることも判明してきている.これはローカルミニマム(評価関数の極小値)の組合せでも行動獲得ができる新しい成果でもある.

今後の研究の推進方策

現在までの研究では,1) アメーバが群れとなって前方の目的地の光源へ向かう自律行動の獲得,2) 犬モデルが次々に変更される目的地に追従する自律歩行の獲得,3) 多輪車両による災害探索ロボットの自律的な走行行動の獲得,4) 室内環境における案内ロボットの自律走行の獲得,5) 学習機能をもつ無人搬送機(AGV)の協調行動の獲得などの単一行動の基礎研究を行なってきている.これらの 統合型エージェント(SA)としての人工生命の行動獲得の新規な方法論を古代魚の行動獲得に適応する.ここで,SAとは,仮想物理環境空間でセンサー,コントローラ,アクチュエータを持ち,自律的に複合的かつ複雑な行動を実現する人工生命モデルである.
Brooksの包摂アーキテクチャ(SSA)は,一対のコントローラがセンサー情報により歩く,徘徊する,等の単一行動を実現し,それを並列化している.この SSAでは,単一行動に当初から行動を想定したプログラムが用意され,この行動を切り替えるスイッチ機能もプログラムで行われる.これに対しビヘイビアコンポーズド(BC)は,単一行動およびこれらを組み合わせた複合行動もEANNよる自律行動獲得を行う概念であり,人工生命の行動獲得実験を通して陸上と海中環境内における人工生命の行動獲得の有利性をH30年度に確認した.
平成31年度は,30年度の研究を引き続き行うと同時に古代魚の身体性を考慮しながら睡眠・遊泳や補食などの様々な動きをBCの行動として獲得することを検証する.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] カンブリア紀のハルキゲニア生物の行動再現に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      中山裕貴,渡辺美知子,鈴木育男,岩館健司,古川正志
    • 学会等名
      2018年度精密工学会北海道支部学術講演会
  • [学会発表] 多輪車両による災害探索ロボットの自律的な行動獲得2018

    • 著者名/発表者名
      菊光美樹男,渡辺美知子,鈴木育男,岩館健司,古川正志
    • 学会等名
      日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2018
  • [学会発表] 任意環境における無人搬送車(AGV)の協調行動の獲得2018

    • 著者名/発表者名
      倉本航佑,渡辺美知子,鈴木育男,岩館健司,古川正志
    • 学会等名
      計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会講演論文集(SI2018)
  • [学会発表] マルチコプターの自律飛翔行動の獲得2018

    • 著者名/発表者名
      小野木香苗,渡辺美知子,鈴木育男,岩館健司
    • 学会等名
      情報処理北海道シンポジウム2018
  • [学会発表] 自律型無人潜水機の自律行動の獲得2018

    • 著者名/発表者名
      望月翔太,渡辺美知子,鈴木育男,岩館健司,古川正志
    • 学会等名
      2018年度精密工学会北海道支部学術講演会
  • [学会発表] 室内環境における案内ロボットの自律走行の獲得2018

    • 著者名/発表者名
      冨田健斗,渡辺美知子,鈴木育男,岩館健司,古川正志
    • 学会等名
      情報処理北海道シンポジウム2018

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公開日: 2019-12-27  

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