研究課題/領域番号 |
18K04041
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三河 正彦 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (40361357)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 移動ロボット / 知覚情報処理 / 意識モデル / 睡眠覚醒機能 / 印象評価 / 省電力化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,利用者に優しい情報提供移動ロボットシステムを構築することである.特に人に親近感を与えるロボットの動作に着目する.適切な行動の実現には,複数の外界センサから収集する人とロボット周辺に関する知覚情報を多数,並列に処理する必要がある.本研究な特徴は,人間の睡眠覚醒機能に基づく数理AIMモデルが,知覚情報の並列処理の実行頻度を制御し,必要な処理を必要な時に実行可能な新たな知覚情報処理系を有することである.ロボット周辺の変化をセンサが検出するとAIMモデルは覚醒状態となり,外界情報処理を優先する.変化が無くなると,外界情報処理頻度は低下し,睡眠状態に移行する.更に睡眠時には,覚醒時に収集した記憶情報に基づく機械学習により,認識能力が向上する新たな知能化機能も実現する.本研究課題三年目は,クローラ型移動機構を有する移動ロボットと基礎実験用の車輪型移動ロボットを用い,次に示す安全なシステム運用のための遠隔操作システムの改良と,初年度に取り組んだ人の顔と名前の学習に基づく名前呼びかけ機能の研究成果取りまとめを行なった. (1) これまで北海道稚内市駅ビルや商店街において,地域情報収集のために遠隔操作型クローラ型移動ロボットを用いた実験を行なってきた.しかしロボットから遠隔操作者に送信される映像に音声に時間遅れがあり,遠隔操作性に課題があった.そこでシステム構成を見直し,複数カメラの映像を合成する必要の無い広視野カメラと送信遅延の少ないWebRTCの組み合わせにより遠隔操作システムを全面的に見直した. (2) 人の顔と名前の学習機能と数理AIMによる睡眠覚醒機能の組み合わせにより,人に対する名前呼びかけ機能を実現し,人のロボットに対する印象が向上することが評価実験により示されていたので,本研究成果を査読付英語原著論文として研究成果発表を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は「1: 数理AIMモデルに基づく意識状態を表現するフレームワークの構築」「2: 数理AIMモデルのロボットへの適用と有効性の評価」「3: 人が好印象を持ち近づきたくなるサービスロボットの実現」である.研究実績の概要で述べた(1)の遠隔操作システムの改良は,本研究課題を実現するためのシステム構成の重要な一機能である遠隔操作機能の関連する部分で,2020年度に時間遅れの少ない遠隔操作システムとして実装することができた.しかしながらCOVID-19の感染拡大に伴い,大学内や北海道稚内市において実験実施が支障がでてしまい,評価実験を行うに至らなかった.(2)については研究課題1から3に関連し,数理AIMの睡眠状態において顔画像識別器の再学習を実行することにより,計算機資源の有効利用の実証,人のロボットに対する印象の向上の実証を英語原著論文として成果を取りまとめることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度まで現場実験の拠点としていた稚内北星学園大学まちなかメディアラボの中央商店街からの移転に伴い,2019年度からは稚内駅ビルであるキタカラ ((株)まちづくり稚内)を拠点として,駅ナカ,駅前,中央商店街付近を利用して研究を進めている.しかしながら前述したようにCOVID-19の感染拡大に伴い,2020年度は評価実験の実施に支障が出てしまい,本研究課題を延長せざるを得なかった.2021年度も感染の収まりは未知数であるが,2021年3月から4月にかけて,JR稚内駅ビルであるキタカラ1Fに,遠隔制御による移動ロボットを用いた実験のための光ファイバとWifiによるインタネット回線を敷設し,実験の準備を整えつつある.駅ビルに常時移動ロボットを設置し,これまでの研究成果で得られた視線による行動予告機能による円滑な人とロボットのすれ違い機能や,人の顔を覚える機能,数理AIMによる睡眠覚醒機能による計算機と移動ロボットの電源の有効利用等の実証実験を通して,本研究課題の有効性を確認する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により,学内での実験や北海道稚内市での実験等の研究活動が縮小したため,支出および研究の計画に遅れが生じた.2021年度に学内での基礎検討および北海道での実験を2021年度に実施する予定であり,そのための実験機器や旅費などに研究費を使用する.
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