研究実績の概要 |
本年度は,画像処理を利用した簡易的な非接触型の摂食嚥下動作の認識システムの構築を行った.カメラにより喉元を撮影し,特徴点を抽出することで,一連の摂食嚥下動作を行ったときの特徴点の動きをオプティカルフローで捉え,咀嚼時と嚥下時の特徴点のフローについて特性解析を行った.解析においては,喉元の注目領域における特徴点の移動ベクトルに着目し,-180度から+180度まで30度ごとに分類することで,観測された特徴点の分布量をヒストグラム化して解析を行った.その結果,咀嚼の場合には特徴点フローの角度分布が特定の方向に集まっており, 水平方向を0度と定めると,+90度および-90度の鉛直方向の動きを繰り返していることが確認された.その一方で,嚥下の場合は喉頭隆起の動きによって特徴点フローが乱れ,あらゆる角度方向の動きが観測された.これらの異なる角度分布の特徴を利用して,ニューラルネットワークにより,“動きなし”,“咀嚼”,“嚥下”の3つの状態判別が可能な認識システムを構築した.ここでは特徴点フローについて,12分割された角度分布量を正規化し,昇順に並べ替えを行ったものを入力信号として学習させた.学習させた重みパラメータを利用することで,検証実験を行った結果,注目領域については,顎下側から喉頭隆起下側にかけての範囲を設定することで,より正確に判別されることが分かった. また, 顔の向きについては,カメラ正面に対して上を向いた状態として喉元を強調させた方が,判別結果はよくなることが確認できた.最終的には適切な条件下において,“咀嚼”ならびに“動きなし”は100%,そして“嚥下”については90%の確率で認識できた.
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