研究課題/領域番号 |
18K04044
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 玄 東京工業大学, 工学院, 准教授 (70395135)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高強度化学繊維 / 腱駆動 / 摩擦熱 / 耐久性 / 製紐法 |
研究実績の概要 |
本研究では,高強度化学繊維ワイヤの(1)摩擦熱に対する耐久性,(2)繊維原糸とその編み方による出力最大化,(3)ロープ径のスケーラビリティの3点を検討する.以下,本年度の進捗を各項目ごとに記す. (1)ロープ直径を標準のΦ2mmと定め,繰り返し曲げ耐久性試験機の試験プーリを,ベアリングで保持した工具鋼,固定した上で材質を工具鋼・アルミニウム合金・ポリアセタール樹脂としたものの4種類,さらにプーリ直径をΦ24mmとΦ10mmの2種類とした.さらに繰り返し曲げ回数を1.4万回,7万回の2条件と設定した.この試験条件に対し,高密度ポリエチレン繊維・ポリアリレート繊維・PBO繊維・パラ系アラミド繊維の4種類のロープに対して繰り返し曲げ試験を実施し,その際のプーリ温度,試験後のロープ強度の計測を行った.繰り返し曲げ試験の総試験数は4×2×2×4=64通りである.現在,試験結果を分析中である. (2)ポリアリレート繊維原糸に対して,前年度までに検討した原糸直径の影響,潤滑のための油剤の影響に加えて,製紐方法の影響を調査した.繰り返し曲げ試験を実施し曲げによる強度低下を引張試験により計測した.その結果,耐久性の高い組み合わせのロープを見出すことが出来た. (3)従来Φ2mmを基準として引張強度を計測してきたが,Φ3~Φ6まで計測するため,引張試験機に接続するロープ固定治具を試作し,Φ4まで計測可能であることを実験的に確かめた.Φ5~Φ6は次年度で確認を行う. また,プロペラ自重補償型超軽量アームについては,構造材のねじれをプロペラ配置により補償する新たな機構構成法について定式化を行い,動力学シミュレーションおよび全3節,全長6.6mの試作機を用いた実験により有効性を確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は系統的な試験を実施し,十分な数のデータを得ることが出来た.1試験条件あたり最大2日程度の試験時間が必要であることから,網羅的なデータを得るためには多大な時間を要しており,解析は次年度以降にまとめて行う予定である.本年度はデータを得ることに注力したため学会発表などは行っていないが,次年度以降順調に学術的成果が出るものと期待できる.プロペラ自重補償型超軽量アームについても,新たな機構構成法を導出し,有効であることをシミュレーションならびに試作機による実験により検証することができており,今後の試作機開発に重要な知見を得ることが出来ている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた実験データを分析することにより,摩擦熱に対する耐久性についての知見をまとめる.また引き続き化学繊維ロープの基礎特性試験をΦ2以上のロープに対して実施し,スケーラビリティについて検証する.より太いロープ直径に対して繰り返し曲げ試験機を行うため,試験機のロープ駆動用アクチュエータをすでに改良済みであり,次年度は順次計測を行っていく予定である.また,プロペラ自重補償型超軽量アームについては,現有の試作機を実際に動作させ4節10mモデルを用いて基本的動作を実現するとともに,化学繊維ロープ駆動とプロペラ駆動を組み合わせた,次期モデルの試作機を構成し,長尺化の限界に挑戦する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,様々な編み方やロープ径を変えた化学繊維ロープに対し,繰り返し曲げ耐久性試験時に発生する熱を非接触で測定するとともに,耐久試験後の張力を計測することで評価を行う.当初計画では試験ロープは購入する予定で,そのための予算を計上していたが,原糸メーカより無償提供されたサンプルについて,評価を行い特性把握を進めた.また繰り返し曲げ試験装置も改良を予定していたが現有の機器を組み合わせることで対処できることが分かり,このため装置試作費用分が繰り越されることとなった.またプロペラ自重補償型超軽量アームについては,当初は初年度より試作を行う予定であったが,現有の試作機の評価・改修を十分に行った上で次の試作を行った方が良いと判断したため,この分の費用も繰り越されることとなった. 今後はロープ径を変更した場合の特性について様々なロープを試作し,検討を進める.また,プロペラ自重補償型超軽量アームの新規試作を行い,全長20mの超長尺アームの実現を目指す.
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