研究課題/領域番号 |
18K04055
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
清水 創太 芝浦工業大学, デザイン工学部, 教授 (20328107)
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研究分担者 |
佐藤 進 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (50005401)
河村 希典 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90312694)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロボティクス / 液晶広角中心窩センサ / メカトロニクス / 液晶レンズ / 高速応答制御 |
研究実績の概要 |
初年度の取り組みでは,液晶層の暑さが数10μmオーダーの液晶レンズをターゲットにした高速焦点距離変化を実現する手法の確立に取り組み,液晶レンズの誘電率に着目した制御手法を考案した.液晶ディスプレイ等に用いられている液晶素子は厚みが数μmオーダーであるため,ステップ状に印可電圧を変化させるだけで,光の透過率の変化に対しては十分高速な応答が得られる.一方,液晶素子を焦点距離可変なレンズとして,実用に耐えうる焦点距離の可変範囲を実現するには,より大きなレンズパワーを必要とするため液晶層の厚みを大きくする必要がある.しかし,厚みの2乗に比例して応答速度が長くなるため,目標焦点距離への高速応答を実現するためには独自の制御技術が必要となる.ここでは,設計・モデル化フェーズと試作・評価検証フェーズの2つの行程で研究を遂行した. 設計・モデル化フェーズにおいては,液晶レンズセルの構造をコンデンサとみなし内部の誘電率から液晶レンズセルに印可された2つの瞬時電圧の推定手法とこれを用いた液晶レンズ焦点距離のフィードバック制御手法の考案に研究分担者の秋田大学佐藤進名誉教授とともに取り組んだ.研究分担者と打ち合わせるために国内旅費の中から研究打合わせ旅費を使用した.また,平成30年9月には研究協力者であるItalian Institute of TechnologyのG.Sandini教授の研究室を訪問し,研究調査を実施した. 試作・評価検証フェーズにおいては,研究協力者である秋田大学河村希典講師の協力の下,高電圧駆動型の液晶レンズセルを製作した.実験装置を構成するための電子部品を購入するために消耗品費を使用した.また,国内旅費を使用して研究打合せと国内及び国際学会での成果発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
液晶レンズの駆動には通常交流電圧が使用され,その実効値を入力値として使用する.そのため,当初は液晶レンズセルに印可される2つ電圧の瞬時値を測定することは困難であると考え,製作した液晶レンズセルを測定して得られた性能データに基づくフィードフォワード制御を計画していた.しかし,研究分担者の秋田大学佐藤進名誉教授と議論の結果,液晶レンズセルの誘電率に着目し,液晶レンズセルへの印可電圧の瞬時値を計測することでフィーバック制御可能であるとの着想に至りその制御手法を考案した.当初低電圧駆動型の液晶レンズセルを使用していたが,経年による性能の変化が大きいため,研究分担者の秋田大学河村希典准教授の協力の元で経年変化の影響の小さい高電圧駆動型の液晶レンズセルを製作した.これにより,液晶レンズセルに印可する実効電圧と焦点距離の関係の経年変化の問題が大幅に改善された. これらから初年度の取り組みについては,設計・モデル化フェーズに対して試作・評価検証フェーズがやや遅れていると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
製作した高電圧駆動型の液晶レンズを用いて,考案したフィーバック制御手法を元に液晶レンズ実機の焦点距離高速可変制御の検証実験を実施する.まずは,ズームシステムに必要な2つの液晶レンズセルを同時に制御するのでなく,液晶レンズセル単体ごとの制御実験を行い,レーザー干渉光学系を用いて液晶レンズセルの動作の様子を観測する.これにより得られた測定データに基づいて,当初計画していたフィードフォワード制御手法による検証実験ついても併せて実施することを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月18日から20日にかけてドイツ・イルメナウ工科大学で開催された国際学会ICM2019の支出が大学の経理スケジュールの関係で平成31年度の支出となっているため.
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