本研究の目的は、ミリメートルサイズのロボットにシリコンデバイスを実装した、昆虫型のマイクロロボットシステムの開発である。ロボットに実装するシリコンデバイスは、ロボットの移動機構である静電アクチュエータ、ロボットの制御機構であるハードウェアニューラルネットワーク、移動機構および制御機構に電源を供給する太陽電池である。3年間の研究実施計画の概略は、初年度に移動機構の開発、継続年度に制御機構の開発、最終年度に移動機構、制御機構、電源を搭載したマイクロロボットの開発である。 当該年度(最終年度)は、初年度および継続年度に当初の計画通りおおむね順調に進展した移動機構の開発および制御機構の開発を基に、研究協力者が既に開発した電源を搭載する予定であった。残念ながら緊急事態宣言の発出に合わせ、シリコンデバイスやロボットの筐体を作製するために必須な日本大学理工学部内のクリーンルームの稼働も停止したため、研究内容を縮小し、移動機構および制御機構の改良を実施した。移動機構においてはマイクロロボットの脚を新たに2種類開発した。また、ロボットの制御機構の開発については、初年度、継続年度の試作に引き続き、東京大学大規模集積システム設計教育研究センターを通じて新たに3種類のチップ試作を実施した。当該年度に作製した試作チップはマイクロロボットの制御機構としての性能を満たし、開発は計画通り進んだ。 一連の研究成果を4件の論文誌、2件の国際会議、9件の国内学会に報告した。 今後の研究の展開に関する計画について、本研究開始時には明確なアプリケーションを持たなかったが、新たに日本大学医学部のアイデアと協力を得た。今後は本研究の研究成果を基に、人体の大腸内で活躍する医療用マイクロロボットとして、研究を展開する計画である。
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