研究課題/領域番号 |
18K04076
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
渡邊 浩太 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (20322828)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 最適化 |
研究実績の概要 |
本研究は,回転子が磁性体のみから構成されており低価格・高信頼性なことから注目されているスイッチトリラクタンスモータに着目し,最適化によりその高性能化を目指す研究である。将来急速に普及すると見込まれる電気自動車には,高価な永久磁石を用いたPMモータがもっぱら用いられている。スイッチトリラクタンスモータの欠点である騒音・振動や低トルク特性を最適化によって改善できれば,電気自動車をはじめとして幅広い分野で利用されるようになると期待される。 昨年度は、スイッチトリラクタンスモータの回転子形状の最適化を行うのに際し基準となるモデルの作成を行った。そして、市販解析ソフトによる結果との比較などを通して、そのモデルの信頼性を確認した。また、スイッチトリラクタンスモータでは,回転子の形状が電流波形に強く影響を及ぼすため,電流波形も未知数として解析を行う必要がある。しかし,それには計算コストが上昇する問題点がある。そこで,簡易的に電流波形を評価する方法を提案し,その有効性の検証と最適化を実施した。 これらの成果を踏まえて、今年度は実際に回転子形状の最適計算を行った。最適化のアルゴリズムには、進化型計算で標準的に用いられている遺伝的アルゴリズムに加えて、本研究グループで開発を進めてきた免疫型アルゴリズムをベースとしたトポロジー最適化を使用した。その結果、初期形状と比較してトルクリップルを低減しつつ、平均トルクが向上する形状を見出すことができた。また、トルク特性には、電流の切り替えタイミングが大きく影響する。そのため、切り替えタイミングが最適形状に与える影響に関して検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるスイッチトリラクタンスモータの回転子形状の最適化に関して,最適化計算を実施してトルク特性が改善できることを示した。また、最適化アルゴリズムの改良や電流の切り替えタイミングが与える影響に関しても研究を行った。これらの成果は国際会議で2件の発表し、そのうちの1件は論文として採択が決定した。また,POD法とデフレーション法を組み合わせた高速化手法がモータの電磁界解析で必須である非線形磁場解析にも適用できることを確認し,その成果を国際会議で発表予定である。これらの成果は当初計画で予定していた進捗とほぼ一致する。
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今後の研究の推進方策 |
スイッチトリラクタンスモータの回転子形状の最適化計算を引き続き実施し、その成果を国際会議にて発表し,論文にまとめる予定である。また,電磁力や遠心力よって発生する回転子内部の応力分布を解析する有限要素プログラムも完成して、応力を考慮した最適計算も行えるようになった。スイッチトリラクタンスモータはその堅牢な回転子形状から、高速回転が求められる用途にも向いていると考えられるため、高回転モータの特性改善を目的とした最適化にも取り組む予定である。 解析の高速化に関しては,POD法とデフレーション法を組み合わせた手法をモータの磁場解析における非線形計算にも効果があるのかを確認していきたい。また、線形計算では高速化の効果があまり見られなかったのでその原因の究明を引き続き行いたい。これまで、回転子形状の最適化を行ってきたが、固定子側の形状もトルク特性に大きく影響する。そこで、固定子側、特にギャップ付近の最適化を行っていきたい。現在、プログラムはほぼ完成しており、最適計算に向けて、最適化範囲の設定や、コイル形状の検討を行っている段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での発表のための旅費を予算に計上していたが,旅費にかかった経費が想定よりも少なかったため,繰越金が発生した。 この金額は今年度の旅費および国際会議参加費などに充てる予定である。
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