キャパシタは、インダクタに比べ集積化に適しているので、集積化されたSC(Switched Capacitor)DC-DCコンバータが提案されている。しかし、チップ上に構成できる容量は、一般に、MIM(Metal insulator Metal)を使うので容量値は小さく、mAオーダーの小電流出力しか取れないという問題がある。ディープトレンチのような特別な素子を使えば、数百mA以上の電流を扱えるが、標準プロセスでは使用できない。そこで、MLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor)を標準CMOSプロセス上に直に実装することで、ディープトレンチ並みに電力密度を上げることができることを確認した。これにより、安価で信頼性の高いスイッチトキャパシタDC-DCコンバータを可能にした。 一方、MLCCには、ディープトレンチの容量とは異なり寄生インダクタ、寄生抵抗が存在し、これによる影響を考慮する必要がある。一つは効率への影響、もう一つはスイッチングノイズへの影響である。特にプロセスの短チャネル化に伴い、スイッチングノイズが増すので、EMCの問題を解決する必要がある。効率への影響に関しては、MLCCのスペックから効率に影響が生じない動作スイッチング周波数の最適値の選択方法を明らかにした。スイッチングノイズについては、一般に、メインスイッチのスルーレートを調整して、全体のスロープを調整する方法が提案されていた。しかし、この手法では、スイッチングノイズは低減できるが、DC-DCコンバータの主要な仕様である効率が犠牲になってしまう。そこで、これを解決する手法を提案し、その効果を確認した。メインスイッチをパラレルに接続し、スイッチのON/OFFのタイミングにディレイを設定することで、損失に大きな影響を与えず、スイッチングノイズを低減することが可能であることを確認し提案した。
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