高温超電導電力機器はグリーンイノベーションのキーテクノロジーとして期待されている。同機器が小型・高効率・低コストなどを満たすように最適に設計されるためには,同機器に使用される高温超電導線の通電特性を十分に把握しておくことが必須である。そのためには大電流を通電可能な電源が必要となるが,市販の特に交流電源は体積・重量が非常に大きく,特定の研究機関でなければ導入が難しい。そこで,汎用性のある小型・軽量の交流大電流電源を,鉄心を不要とする空心高温超電導変圧器にて実現をする研究を行った。一般に変圧器は励磁インピーダンスを大きくするために鉄心を用いるが,変圧器において鉄心は体積・重量の大半を占める。本研究での電源は短尺線材に通電をするものであるため,大電流が必要である一方で電圧は低くてもよい。電圧が低ければ励磁インピーダンスが小さくても励磁電流を低減できる。このことから空心変圧器について検討をした。有限要素法を用いた電磁場解析にて変圧器の構造を検討したところ,パンケーキ型の同軸構造が最適であることがわかり,それに基づいて実機を作製し,通電試験を行った。その結果,電源の体積と重量を市販電源の1/200以下にすることができ,商用周波数で1 kApeak,1 kHzでも300 Apeak以上の通電を可能とする電源を作製することができた。汎用できる体積・重量であり,市販の高温超電導線に対して十分な出力電流である。
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