本研究では,これまでに研究代表者が開発してきた需給制御マネージャを用いて柔軟な形態の自立分散型電力システムの供給信頼度と最適性を追求することで太陽光発電や電気自動車などの大量導入環境における電力系統の諸課題を解決することを目的としている。開発した需給制御マネージャは,既存システムの負荷分散化やシステムの再構築あるいは未電化地域における新たなシステムの構築を行う際に柔軟に対応できるエネルギーマネージメントシステムであり,発電機運用計画などの機能を有しており,各機能を個々に独立させて運用することも可能である。2020年度では,天候条件に起因する太陽光発電出力の不確定性に対し,急峻な予測外れに対応できるような調整力確保機能として,緊急時デマンドレスポンス機能および,電気自動車に搭載される小容量蓄電池を用いた調整力確保機能の追加を行い,電力需給制御マネージャのさらなる改良を実施した。これにより,平常時の経済的なシステムの運用はもちろん,予測外れなどに起因する緊急時の需給状態において、ロバストに電力需給管理を行えるようになった。特に緊急時デマンドレスポンスの機能追加に関しては,実際には需要家への通信ネットワークが必須となるため,通信遅延などによる影響も加味して現実に近い形での簡易実証も行った。本研究成果はオンライン開催ではあったが令和2年電気学会電力・エネルギー部門大会などの国内会議,2020 IEEE PES ISGT Europeなどの国際会議で多数報告し,その成果を論文誌(電気設備学会論文誌および電気学会論文誌B)にまとめ,広く公表した。
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