研究課題/領域番号 |
18K04092
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
今坂 公宣 九州産業大学, 理工学部, 教授 (40264072)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パルスパワー / 表面改質 / ナノカーボン / 固体高分子型燃料電池 / オゾン / カルボキシレートイオン / アミノ基 |
研究実績の概要 |
本研究では、パルスパワー技術を用いてカーボンナノチューブ(CNT)等のナノカーボン材料の表面改質を行うことにより高機能化し、固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極材料として応用する。また、表面改質技術をさらたに深化させ、極性の異なる親水性官能基で修飾された水溶性ナノカーボンを創製し、PEFCの動作特性における出力向上を目指す。さらに燃料電池の等価回路モデルを構築して実験と理論の両面より本研究の有用性を検討することを目的としている。 本年度は、多層CNT、カーボンブラック、ケッチェンブラックの3種類のナノカーボン材料を用いて酸素雰囲気中でのバリア放電を利用してオゾンを生成し、表面改質を行った。酸素流量1L/minで放電時間を30分、60分、周波数100Hz、ナノカーボン材料は50mgとした。バリア放電の電圧は約6.5kV、最大パルス電流は約2Aである。オゾン濃度は約65-100ppmであった。オゾン暴露後のナノカーボン材料の表面分析結果より、多層CNTとCBはほぼ酸素原子の量が増加した。これは、表面に水酸基やカルボキシル基等の水溶性官能基が導入されたことを示唆している。一方、KBでは酸素原子の量が減少した。水中での分散性を検討した結果、多層CNTについては表面分析結果と対応したがCBとKBでは表面分析結果と一致しなかったため、次年度に検討する予定である。 また、自動塗布装置を用いて燃料電池の電極を作製した。膜厚の調整や一度に複数個を作製することが可能となった。作製した多層CNT電極によるPEFCの出力特性結果より、水素極に表面改質CNT を用いることで出力を向上できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために平成30年度は研究計画項目に基づいて、(1) 種々のナノカーボン材料の表面改質と表面分析並びに表面観察、 (2)固体高分子型燃料電池の動作特性試験についての研究を遂行した。(1)については、ナノカーボン材料としてカーボンナノチューブ、触媒である白金担持率が異なるカーボンブラックおよびケッチェンブラックの3種類を用いて酸素雰囲気中でのバリア放電で生成したオゾンによる表面改質を行った。 (2)については、PEFCの出力特性における電極材料の最適な組み合わせを検討するために表面改質CNTと未処理CNTを用いて出力特性試験を行った。 以上の研究計画項目(1)に対して「研究実績の概要」に記載した通り、当初の計画を概ね達成できている。しかし、ナノカーボン材料の種類によって表面改質効果が異なる結果が得られたため、継続して調査する予定である。また、研究計画項目(2)については、電極作製の高効率化のために自動塗布装置を導入したことにより、同時に複数個の電極を作製することができるようになった。一方、作製した電極を用いてPEFCの出力特性試験を行ったが再現性があまり認められなかったため、作製条件等を検討する予定である。このように一部で継続的な課題もあるが、パルスパワー技術を用いたナノカーボン材料の表面改質技術の深化と固体高分子型燃料電池への展開のための方策を徐々に確立できており、本研究を進展できていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究内容を継続してバリア放電を用いたナノカーボン材料の表面改質および固体高分子型燃料電池の出力向上の観点より、(1)極性の異なる官能基による表面改質法および(2)固体高分子型燃料電池の動作特性試験について研究する。(3)表面改質CNTの効果および固体高分子型燃料電池の等価回路モデルの構築と物理現象の解明についての研究も行う予定である。 研究計画項目(1)については、酸素ガス中でのバリア放電により生成したオゾンによるCNT表面改質の継続とともに窒素ガス中での表面改質を行う。これは、オゾン処理によって表面に導入される官能基である負極性に帯電したカルボキシルレートイオンとは異なる正極性に帯電したアミノ基の導入を検討するためである。研究計画項目(2)については、これまでの研究成果よりカルボキシルレートイオンが導入されたCNTをPEFCの電極材料として用いる際に酸素極と水素極での組み合わせがPEFCの出力特性に影響することが明らかになっため、異なる極性の官能基を導入したナノカーボン材料のPEFCの出力特性における効果を検討するためである。 これらの研究に関して表面改質ナノカーボン材料の効果については、PEFCの出力に対する表面官能基の導入条件や表面改質ナノカーボンと燃料電池電極との最適な組み合わせの検討並びに表面官能基と白金担持量の相関性の考察を行う。また、固体高分子型燃料電池の等価回路モデルの構築と物理現象の解明については、研究計画項目(3)として、燃料電池電極のインピーダンス測定(Cole-Colo プロット)、RLC 直並列等価回路によるインピーダンス解析(実験との比較検証)および異極性の官能基の帯電極性を考慮した等価回路モデルの構築の検討等を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、酸素雰囲気中でのバリア放電により生成したオゾンによる3種類のナノカーボン材料の表面改質およびバリア放電現象の観察たオゾン濃度測定、表面改質状態の観察および分析を行った。また、電極作製の高効率化のために自動塗布装置を導入して電極作製し、PEFCの出力特性実験を行った。これら一連の研究で、オゾン表面暴露による3種類のナノカーボン材料の表面改質、それらの表面状態の分析や電極作製に時間を費やしたため、実施予定であったアミノ基等の異なる極性の官能基導入実験は遂行できなかった。そのため、これらの研究を遂行するために消耗品等の購入物品を研究に支障のない範囲で金額を抑えたことなどにより次年度使用額が生じた。 次年度使用額の主な用途は、バリア放電用放電容器内に設置するアミノ基導入のための電極系材料、アミノ基導入のための封入ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)、燃料電池電極材料であるナノカーボン材料等をの購入に用いる予定である。
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備考 |
九州産業大学教員詳細情報 http://ras.kyusan-u.ac.jp/professor/0002960/profile.html
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