本研究では、パルスパワー技術を用いてカーボンナノチューブ(CNT)等のナノカーボン材料の表面改質を行うことにより高機能化し、固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極材料として応用する。本年度は、昨年度の研究項目であナノカーボン材料として多層CNTとカーボンナノホーン(CNH)を用いてバリア放電生成のオゾンによる表面改質に関する実験を実施した。放電時間30分、60分、120分で周波数100Hz、酸素流量1L/minとした。バリア放電の開始電圧は約6kVでスパイク状のパルス電流が観測され、最大パルス電流は、約2Aであった。オゾン濃度は、バリア放電開始とともに上昇し、約5分程度で100ppmに達した。X線光電子分光法(XPS)によるナノカーボン材料の表面分析を行った結果、多層CNTおよびCNHのどちらの表面でもオゾン曝露によって酸素の割合が増加した。主にC-O結合(エ ーテルまたはヒドロキシ基)、C=O結合(カルボニル基)およびCOO結合(エステルまたはカルボキシ基)であることがわかった。この酸素の割合は、バリア放電時間30分のときが最も高くなった。このことは、本技術により短時間で表面改質が可能であることを示唆している。さらにこれらのナノカーボン材料を用いてPEFCの電極を作製し、PEFCの出力特性実験を調査した結果、表面改質した多層CNT、CNHをPEFCの水素極に用いることで出力特性が改善できることがわかった。具体的には、電力-電流密度特性で多層CNTでの場合は約3倍、CNHでは約2倍に向上した。さらにPEFCのインピーダンス測定により、電極内部における白金による水素への触媒作用と関連する反応抵抗が、多層CNTで約1/3、CNHで約1/2に低減できたことがわかった。このことは、表面改質による酸素を含む官能基の導入によって白金の触媒作用が効果的に作用したことを示唆するものである。
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