本課題は、大気開放下で発生できる低温プラズマの反応エネルギーを利用し、非真空かつ非加熱で酸化亜鉛膜を形成する技術として塗布プラズマ分解法(Metal Organic Plasma Decomposition: MOPD)を開発するものである。 2022年度は、MOPD法のための大気開放型低温プラズマ源として、三電極構造をもつ誘電体バリア放電(DBD)電極を開発した。三電極式のDBD機構は、気流制御を目的としたプラズマアクチュエータでの応用例がある。本方式では、二次元的な平面状の低温プラズマを形成できるメリットがあり、酸化亜鉛前駆体試料に均一にプラズマ照射効果をもたらすことが期待できる。プラズマ原料ガスとしてヘリウムを導入し、印加電圧2.5k Vおよび周波数40 kHzの正弦波状高電圧を印加した。ヘリウムの流量が5 L/minにおいて、安定な平面状プラズマの発生が確認できた。 次に、全期間における成果の概要をまとめる。本課題では、既存の大気開放型薄膜形成法である有機金属塗布熱分解法(Metal Organic Decomposition: MOD)において、熱の付与による膜形成プロセスを大気圧低温プラズマの化学反応エネルギーで代替したMOPD法の確立を目的とした。 開発した低温プラズマ源にプラズマ原料ガスとしてヘリウムあるいはアルゴン,反応性ガスとして酸素を導入してプラズマを点灯したとき,ヘリウムでは酸素原子,アルゴンではOHラジカルの強い発光が確認された.MOPD法では酸化反応が重要であるため,ヘリウムをプラズマ原料ガスとして採用し,酸化亜鉛の液体前駆体を滴下したPETフィルム試料へのMOPD処理を行った.液体前駆体を乾燥させた試料およびMOPD処理した試料をXRDで評価したところ,MOPD処理した試料では酸化亜鉛に起因する回折ピークが認められた.
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