本年度では,病原性細菌を含むエアロゾルを電界により凝集し殺菌する研究を行った.エアロゾル化した菌液の直流電界及びパルス電界による凝集を行い,凝集後菌液において確認された不活化要因を探るため活性酸素種(ROS:reactive oxygenspecies)の評価を行った. 1.出力波形によるエアロゾル凝集時の消費電力の比較 直流電界とパルス電界を用いたエアロゾル凝集時の出力波形から消費した電力を算出した. その消費電力は直流の2.35 Wに対し,パルス電界は約37.6 mWと非常に低い値となった.これらの値とエアロゾルを除去するまでの時間からエネルギーを算出し,直流電界が101 J,パルス電界が752 mJとなった.直流電界に比べてパルス電界がより高いエネルギー効率でエアロゾルの凝集を行ったことが示された. 2. エアロゾル凝集時のROS濃度評価 エアロゾル凝集容器の内部電極間隔を60 mmで平行に固定し,装置内部でmilli-Q水をエアロゾル化,直流電圧30 kVで30分間凝集を行った.その後,エアロゾルの除去を目的として10分間電界印加のみを行った.印加後の装置内に凝集された液滴を容器内で採取し,これらの試料に対してパックテスト(共立理化学研究所,WAK-O3)を用いたオゾン濃度測定を行った.パックテストにより得られたエアロゾル凝集後の装置内オゾン水濃度について,壁面付着の水滴はいずれも5.0 ppm以上のオゾンが溶解しており,水容器内においても0.20 ppm程度のオゾンが検出された.
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