研究課題/領域番号 |
18K04099
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
高橋 理音 北見工業大学, 工学部, 准教授 (60301975)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクログリッド / 蓄電池 / ディーゼル発電 / 二重給電形誘導発電機 / 周波数安定化 / 小規模電力系統 |
研究実績の概要 |
平成30年度においては,マイクログリッドのシミュレーションモデル開発を目的として,グリッド内で最も大きな影響力を持つ内燃機関駆動の主電源について,新しい機能を搭載した主電源形態の提案とその挙動解析モデルの構築ならびにグリッドに連系した際の効果を評価した。 提案する主電源の新しい機能とは,発電機とその駆動源であるディーゼルエンジンまたはガスエンジンを可変速度運転にすることである。これにより,発電機の機械入力と電気出力を独立に制御可能となるため,変動性の高い再生可能エネルギー電源をグリッドに導入しても,主電源の電気出力を高速に制御してグリッド内の電力需給バランスを高い精度で維持することが可能となる。このとき機械入力と電気出力の不一致は発電機とエンジンの慣性エネルギーで埋め合わせされることになり,すなわち回転速度が変化する。これは,固定速度で運転される従来の同期発電機では行えない運転方式であり,系統規模が小さいことにより変動電力の影響が大きいマイクログリッドにおける主電源として有用である。 本年度は可変速運転を行える発電機である二重給電形誘導発電機と可変周波数励磁のための電力変換器ならびにそれらの制御系をモデル化し,需要家,送配電網,変動電源としての風力発電システムを含めたマイクログリッドモデルに組み込み,瞬時値解析によりその効果を評価した。その結果,従来の同期発電機による主電源である場合に比べて,可変速運転の主電源である場合には電力需給バランスの指標である系統周波数の変動をおよそ40%(変動の偏差値として)低減可能であることが分かった。また,発電機制御のための電力変換器において半導体スイッチング動作に伴うパルス列電圧を平均電圧として扱う理想電源モデルとしたため,演算時間の縮小も可能となった。これにより,本研究で主に採用する主電源モデルの構築は確立できたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度においては,マイクログリッドへの再生可能エネルギー導入を促進させるために必要な技術開発に重点を置き,新しい主電源形態として二重給電形誘導機を採用した可変速度運転方式を提案し,電力系統解析ソフトウェアPSCAD/EMTDCを用いた瞬時値解析モデルの構築と,再生可能エネルギー電源としての風力発電および他の電力機器を含むマイクログリッドモデルの構築ならびに制御系の設計を行った。その結果,従来の固定速度運転による主電源の場合と比べて風力発電由来の変動電力による系統への影響を(周波数変動の偏差値として)およそ40%程度少なくできることが分かったため,本研究における主電源形態を可変速度運転方式として確立させる方向が定まった。しかしながら,発電機の可変速度幅やエンジン出力の変動速度には制約があり,本提案の主電源形態のみでは再生可能エネルギー導入量はおのずと限られる。これを克服するためには蓄電池の導入や需要家での能動的な消費電力調節などマイクログリッドならではの運用が求められ,これらの検討について本研究における次年度以降の研究計画にも掲げられている。 一方で,次年度以降の研究計画を達成するために必要となる高速な演算を行うための実効値解析モデルはまだ確立に至っておらず,未達成項目となっている「汎用の瞬時値解析ソフトウェア(PSCAD/EMTDCまたはMATLAB/SIMULINK)を用いた瞬時値解析結果との比較を通した実効値解析モデルの構築ならびに解析精度の向上」を現在も進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画に掲げた目標のうち検討を継続している項目の達成(「汎用の瞬時値解析ソフトウェアを用いた瞬時値解析結果との比較を通した実効値解析モデルの構築ならびに解析精度の向上」)と,その後は基本的に次年度に掲げた研究計画における目標(主にマイクログリッドの運用特性の調査と設計法の導出,エネルギー貯蔵装置の仕様に依存する系統安定化効果の調査)達成に向けた検討を継続する。 なお,本年度の研究計画において未達成の部分は,次年度以降の研究計画遂行を妨げるものではないため,平行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
導入するソフトウェアのパッケージ構成を実際の使用状況に合わせて変更したことに伴い,本年度の実支出額が支出請求額より下回ったものである。 生じた当該助成金は,次年度助成金と合わせて研究遂行に不可欠な計算機ならびにそのソフトウェアの性能維持と拡充のために使用する予定である。
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