銅酸化物系の高温超伝導体は強い結晶学的異方性を示す.この事実を数値シミュレーションに反映させるためには,多薄層近似を仮定する必要があるが,同近似の下では,遮蔽電流密度の初期値・境界値問題は各時間ステップで大規模連立非線形方程式を解く問題に帰着する.加えて,遮蔽電流密度方程式は領域積分項を含むため,有限要素法による離散化で得られる連立非線形方程式の解法には膨大な計算コストを要する.本研究では,H-行列法に基づく遮蔽電流密度シミュレーション技法を開発した.その結果,同技術を用いれば,複雑形状をした超伝導応用機器中の高速・高精度遮蔽電流密度解析が可能となるはずである.
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