研究課題/領域番号 |
18K04101
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
祖田 直也 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (80323210)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ベクトル磁気特性 / 鉄損 / 小型モータ / 高効率 / 分割コア / 固定子鉄心 / 形状設計 / 極薄電磁鋼 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は,極薄無方向性電磁鋼板を用いて高効率かつ高出力密度を有する小型モータの開発を目的とする。令和元年度は,固定子コアを非分割コア(打ち抜きコア)から分割コアに変更し,電磁鋼板の圧延方向を考慮した固定子分割コアモータの鉄損低減法を提案した。これまでの研究でティース付根部にアールをつけることにより鉄損低減が可能であることを確認していた。アールが大きい程鉄損低減効果も大きくなる。しかしながら,アールを大きくすると巻線領域が減少するため,初期形状のモータと同じ誘起電圧値を得るためには巻線占積率を高くする必要がある。一方,巻線の占積率を高めるために固定子鉄心として分割コアが使われる。分割コアは各部分において電磁鋼板を変更したり,圧延方向を変更することで鉄損低減を図ることが出来るメリットがある。そこで,本年度は分割コアとティース付根部にアールをつける鉄損低減法を組合わせた新しい鉄損低減法を提案した。本手法を用いて小型モータの固定子鉄心形状の設計を行い,解析用ベクトル磁気特性データベースを考慮した有限要素解析により調査した結果,非分割コアを分割コアへ変更することで鉄損を3%低減することが可能であり,さらに分割コアにアールを付けることにより初期形状(非分割コアでアールを付けていない固定子形状)に対して鉄損を約17%低減することが可能であることを確認した。また,アールを付けた分割コア内の圧延方向を変更して鉄損変化を調査した。分割コアにおけるティース中心線を基準として圧延方向の傾き角を定義し,回転子の回転方向に傾けた場合を正,逆に傾けた場合を負とした。傾きを正とした場合は僅かながら鉄損が減少するが,傾きを負にした場合は鉄損が増加することが分かった。これらの研究は,令和元年11月の電気学会マグネティックス研究会(鹿児島)で発表した。以上が,令和元年度の研究実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は固定子分割コアを用いた鉄損低減法を新しく提案した。またこの手法により設計した固定子鉄心形状を使った小型モータの解析で初期形状に対して約17%程度の鉄損低減を確認した。そのため当初予定した以上の成果が得られたと考える。しかしながら,本年度は鉄損低減効果を検討したが出力密度の向上や効率改善に関して検討しなかったため,これを来年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
巻線占積率を高めるために固定子に分割コアを採用したが,アールを付けた固定子分割コアにおいて巻線径を変更した検討を行っていない。そこで,巻線径を変更して効率改善の調査を行う。しかしながら,分割コアはコア間に生じる隙間により,実際にモータを作製する際にトルクの減少が考えられる。そこで,巻線占積率を高める別の手段として固定子のティース形状をストレートティースにして高占積率なコイルを後から挿入する方法も検討する。ストレートティース形状のテーパ角およびティース付根部へのアール付け等により鉄損低減を行う。最終的にこれまでに提案した高出力密度化固定子形状設計も取り入れる事で,高出力密度かつ高効率な小型モータの設計を行う予定である。
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