本研究の課題は,極薄無方向性電磁鋼板を用いて高効率かつ高出力密度を有する小型モータの開発を目的とする。前年度に提案した分割コアとティース付根部にアールをつける鉄損低減法を組み合わせた新しい鉄損低減法に関してまとめた研究成果を2020年8月にバーチャル会議として開催された電気機器に関する国際会議ICEM2020で発表した。分割コアは鋼板から切り出す際に圧延方向の設定角度を変更することができる。この圧延方向の設定角度によって鉄心内の鉄損が変化することが分かっている。そこで,分割コアにおけるティース中心線を基準として圧延方向の傾き角を定義し,回転子の回転方向に傾けた場合を正,逆に傾けた場合を負とした。前年度では,アールを付けた分割コア内の圧延方向の設定角度の調査が不十分であった。そこで,令和二年度は分割コア内の圧延方向の設定角度をティース中心線からモータの回転方向に対して90度までの範囲で変更し,最も鉄損低減を可能とする圧延方向設定角度を調査した。その結果,圧延方向を中心線から回転方向に20度傾けた場合に最も鉄損低減効果が高いことを明らかにした。また,巻線占積率を高める別の手段としてストレートティースのテーパ形状を検討したが,これまでに提案した手法を上回る高出力密度化および鉄損低減効果は得られなかった。結果として,初年度に提案した高出力密度化設計法により初期の小型モータモデルに対して20~30%程度出力密度を向上させることが可能であり,また昨年度および本年度に行った鉄損低減法を適用することで初期の小型モータモデルに対して鉄損を約17%低減することが可能であることを明らかにした。よって,本研究の目的であった極薄無方向性電磁鋼板を用いた高効率・高出力密度小型モータの設計法を提案できたと考える。今後,本手法について国内外の学会を通して広く公開する予定である。
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