本研究では,燃料電池セルに既知の並列抵抗を接続することで,電圧急増を抑制しながら,電気化学インピーダンス分光(EIS)法によるガスクロスオーバー測定を試みた。 測定には電解質膜としてNafion212膜を組み込んだ固体高分子形燃料電池セルを使用した。セル温度,加湿器温度はそれぞれ室温とした。アノードには純水素を流し,カソード側への水素リークを模擬するため,カソードには窒素に少量の水素を混合したガスを流した。測定中にセル電圧が高くなり電極劣化が生じることがないよう,セルに51Ωの抵抗を並列に挿入した。カソード流量を変えて水素リーク量を調節しながらインピーダンスを測定した。 カソードにプロトンがない状態で電流を流し続けるとプロトンを作り出そうとし,電極材料の炭素と水が反応し,電極劣化が起こる。セルに並列抵抗を入れることで余分な電流を抑制しカソードのプロトン不足状態でもインピーダンス測定が可能となる。カソードへの水素リーク量を0.04,0.1,0.2 mL/minとしたNyquist線図を作成した。水素リーク量が0.04,0.1 mL/minのとき,Nyquist線図は大きな半円の一部のようになった。これを考慮すると,水素リーク量が0.2 mL/minで電荷移動抵抗が小さくなったと言える。0.04,0.1 mL/minにおいて,流し込んだ水素は電気化学当量以下となるのですべて消費され,プロトンを作ることができない。カソードにプロトンがないので電荷移動抵抗が大きくなったと考えられる。一方で,水素リーク量0.2 mL/minと30 mAにおける電気化学当量は等しいので,水素が消費されてもなおプロトンが残り,電荷移動抵抗が低くなったと考えられる。よって,印加電流を変えてインピーダンスが急変する電流を求めることで,水素リーク量を求めることができた。
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