研究課題/領域番号 |
18K04103
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
青木 睦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70362316)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 配電系統のループ運用 / ループパワーフローコントローラ / ハイブリッド型電圧調整器 / 太陽光発電 |
研究実績の概要 |
本研究は,将来のエネルギーシステムに欠かすことができない再生可能エネルギーによる分散電源(Distributed Energy Resources:DER),コ・ジェネレーションシステム,電気自動車(Electric Vehicle:EV)などの大量連系に対して柔軟に対応できる高効率かつ高品質な電気エネルギー供給システムの実現を目指して,複数点連系型配電システム(Multiple-Interconnected Distribution System:MIDS)の制御システムおよび保護システムの開発を目的とするものである。 2019年度は,配電線の潮流を制御する新型直列型電圧制御機器(ASR)として,サイリスタとトランジスタのハイブリッド型の直列電圧制御機器を開発した。配電線(回線)どうしの連系をする場合に,別の変電所の配電線となることがある。このとき,変電所間の電圧の位相差が大きいと回線間の連系時に配電線を流れる電流が大きくなるため,配電線の損失が増加してしまうという課題がある。このため,連系できる配電線の選択に制約がある。開発したASRは,このような変電所間で位相差がある場合に潮流を制御できるもので,シミュレーションにより,配電線の損失を削減できることを確認した。また,変電所間で位相差を考慮した場合に,電圧制御機器である自動電圧調整器(SVR)の制御変更による電圧制御効果について確認した。 太陽光発電などの再生可能エネルギー電源が大量に連系された場合の配電系統の電圧適正範囲維持は,将来の配電系統において重要な課題である。複数回線の配電線を連系した配電系統は,電圧を適正に維持するのに有効な方法であると考えられるが,変電所間の位相差を考慮した電圧制御機器の検証や新しい直列電圧制御機器の開発は,過去にも研究事例があまりなく,配電系統運用の幅を広げる実用性が高いものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは,複数点連系型配電システム(Multiple-Interconnected Distribution System:MIDS)において,変電所間で電圧の位相差を考慮して,SVRの制御方法や設置位置の検討を行ってきた。今後は,ここで検討したSVRなどの条件において,短絡故障や地絡故障などの系統故障のシミュレーションを実施していく予定である。 また,複数回線を連系した場合の系統における小容量のインバータとサイリスタを組み合わせた新型直列型電圧制御機器(ASR)の回路方式を構築した。今後,太陽光発電の連系量増加時を想定して,電圧の適正維持だけでなく,損失最小化や電圧不平衡抑制などを達成する制御方法を確立していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は,複数点連系型配電システム(Multiple-Interconnected Distribution System:MIDS)における新型直列型電圧制御機器(ASR)と自動電圧調整器(SVR)の電圧制御機器間の協調制御と系統故障時の保護方法の開発を目的として実施する。 まず,変電所間の電圧位相差を考慮したMIDSにおいて,SVRの設置位置を変えていきながら,電圧の適正維持だけでなく,損失最小化や家庭用の太陽光発電システムなどの増加を想定して,電圧不平衡抑制など電力品質維持を総合的に達成できる制御方法の確立を目指していく。また,MIDSの保護システムの開発について,従来の機器よりも電圧制御範囲が広がったASRを用いて,故障電流の抑制やこれによる新しい保護システムの構築を行っていく。具体的には,ASRを組み込んだMIDSにおいて,さまざまな条件で系統故障のシミュレーションを行い,保護の課題点を整理するとともに,保護システムの検討,および,新しい保護方法と開閉選択の高度化を図り,MIDSの保護に関する課題の解決を図る。 これらの制御方法や保護方式は,これまで,変電所間の電圧位相差間を考慮しない場合のものや,2回線連系の場合などの研究成果があるので,それらの知見を生かしていきながら,研究を進めていく予定である。また,構築した制御方法や保護方法をリアルタイム・ディジタルシミュレータ(Real Time digital Simulator: RTS)にて検証を行って行く予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果として発表するまでにデータをまとめることが遅れてしまったので,研究成果の発表等の旅費の支出がなかった。シミュレーション結果を適切にまとめ,研究成果の発表等を行っていきたい。
|