本研究は,将来のエネルギーシステムに欠かすことができない再生可能エネルギーによる分散電源,コ・ジェネレーションシステムや電気自動車などの大量連系に対して柔軟に対応できる高効率かつ高品質な電気エネルギー供給システムの実現を目指して,複数点連系型配電システム(Multiple-Interconnected Distribution System:MIDS)の制御システムおよび保護システムの開発を目的とするものである。 配電線(回線)どうしの連系をする場合に,別の変電所の配電線となることがある。このとき,変電所間の電圧の位相差が大きいと回線間の連系時に配電線を流れる電流が大きくなるため,配電線の損失が増加してしまうという課題がある。このため,連系できる配電線の選択に制約がある。2019年度は,変電所間で位相差がある場合にも潮流制御可能な新型直列型電圧制御機器(ASR)として,サイリスタとトランジスタのハイブリッド型の直列電圧制御機器を提案した。2020年度は,変電所間で位相差がある場合に,配電線のループ点に設置したループパワーフローコントローラの制御法の構築を行い,シミュレーションにより配電線の損失を削減できることを確認した。また,ループ運用時おいてループパワーフローコントローラを用いない場合に,自動電圧調整器(SVR)の設置位置および制御変更による電圧制御効果についても確認したほか,地絡故障時の故障電流についてシミュレーションを行った。 太陽光発電などの再生可能エネルギー電源が大量に連系された場合の配電系統の電圧適正範囲維持は,将来の配電系統において重要な課題である。変電所間の位相差を考慮した複数回線の配電線を連系した配電系統に関する電圧制御機器の検証や新しい直列電圧制御機器の開発は,過去にも研究事例があまりなく,配電系統運用の幅を広げる実用性が高いものである。
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