引き続きパールチェーン型トリーの進展メカニズムについて考察した。印加電圧や、架橋度を変化させて高速度カメラにてトリーを観察した。さらにpythonを使用して、トリー中の相対的な電界の様子をラプラス方程式を解くことで求めた。印加電圧が大きいほどトリーの分岐が多く、進展速度が速くなった。また、電界強度の強い部分からトリーの進展が見られることが明らかとなった。 シリコーンゲルの架橋度を小さくすると、液体に近づいていくと考えられる。液体とゲル中の高電界現象の関連性を探るため、引き続き架橋度の小さいシリコーンゲル中に発生進展するトリーに関して考察を行った。架橋度の小さいシリコーンゲルは流動性が高いため、トリー管に流れ込む。また、電圧の印加停止や電界の小さい箇所では低温となり、トリー管内部の気圧が減少すると考えられるから、この点においてもトリー管にシリコーンゲルが流れ込みやすくなる。このことが、発生したトリーが消失するメカニズムであると考えられる。トリーが消失した試料に再度電圧を印加すると、前回の電圧印加の履歴に関係なく、トリーが発生進展する。その発生電圧や進展距離は印加回数に影響されておらず、絶縁性の回復が見込まれると考えらえる。 次年度以降の研究の展開も見据えて、トリーの発光現象にも着目してみた。部分放電によるトリーの発光現象の観察自体は珍しいものではないが、局所的なトリー管の発光現象をとらえた実験結果はあまり例がない。発光とトリーの進展との関連性を見ることで新たな知見が得られる可能性があることがわかった。 これらの研究成果は電気学会全国大会およびInternational Symposium on Electrical Insulating Materials 2020 にて発表された。
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