人体が椅子から立ち上がったり部屋の中を歩いたりすると、その人体は静電気が原因で10 kV程度に帯電する。静電気が原因の放電や、電子機器に侵入するノイズが原因で、電子機器は容易に誤動作や故障を引き起こす。パソコンなどの電子機器の近くに人体等の帯電した物体があると、静電誘導が原因で金属筐体内の導体に静電誘導電圧が発生する。電子機器内に生じる静電誘導電圧の瞬時値が10 V程度になると、電子機器は誤動作や故障引き起こす。帯電した人体を模した帯電物体が移動したとき、電子機器の金属筐体内に生じる静電誘導電圧に関して、これまでに研究が行っている。帯電物体が電子機器に近づくときより、帯電物体が電子機器から遠ざかるときの方が、機器内には瞬時値の大きな静電誘導電圧が発生する。帯電物体から遠ざかるときに電子機器の金属筐体内に発生する静電誘導電圧の瞬時値を明らかにすることは、電子機器の誤動作や故障の防止に大変役立つ。本研究では、人体等の帯電物体が電子機器の金属筐体の前から遠ざかるとき、接地されていない浮遊電位の非接地の2つの金属筐体内に生じる静電誘導電圧を実験研究で明らかにした。帯電物体が浮遊電位の非接地の金属筐体Aの前面から遠ざかるとき、金属筐体A内には帯電物体の電圧の約-0.7倍の静電誘導電圧が発生する。その静電誘導電圧の大きさは、帯電物体の電圧が-10 kVのとき、7 kVになる。帯電物体が遠ざかるとき、非接地の金属筐体Aの横に置いた非接地の金属筐体B内には帯電物体の電圧の約0.4倍から約-0.4倍の静電誘導電圧が発生する。帯電物体が二つの非接地の金属筐体から遠ざかるとき、各金属筐体内で放電が起こると、正極製と負極性の静電誘導電圧が繰り返し発生する。本研究成果は、人体等の帯電物体が非接地の2つの金属筐体から遠ざかるとき、電子機器の誤動作や故障の問題を明らかにでき、防止対策の検討に役立つ。
|