近年、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー発電の導入が進んでいる。これらの発電は気候や天気によって出力が変動し、周波数変動の問題が生じる。また系統連系時に火力発電等のように同期発電機を用いないので電力系統に慣性をもたらさないことから、大量に火力発電を代替すると周波数の変化が急峻となる。この問題の解決策として、本研究では同期機で直接系統連系し,慣性モーメントを変化させて充放電を行う固定速フライホイール電力貯蔵装置を開発した。慣性モーメントを変化させる際に、フライホイールの回転トルクを利用する自己慣性可変型へと改造することで,損失を低減し放電運転時に正のパワーを出力することを目指した。 試作機を用いた実験の結果,これまで実施してきた誘導機を用いた場合のみならず,同期機で直接系統連系した際も充放電運転を達成できた。ただし,充放電開始時に同期機のトルクが急変するために乱調現象が生じることが分かり,乱調の抑制が課題であることを明らかにした。 また試作機では放電運転時に,種々の損失が生じつつも,トルクと回転角速度の積である機械出力では、フライホイールから発電電動機への放電を達成した。ただし発電電動機からの電気出力としては系統側への正の電力潮流は達成できなかった。そこで主に慣性モーメント可変機構における損失の測定も行ったところ、その機構において大きな摩擦損失が発生していた事が判明した。またエネルギー収支を見ると、風損の低減及び下部機構の損失の低減を行うことで、放電運転時に正味の電力エネルギーの放出を達成できる見通しを得た。
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