研究実績の概要 |
モータコア損のビルディングファクタの研究として、リングによる正弦波励磁、インバータ励磁、モータの正弦波励磁、インバータ励磁のコア損を計測した。元来モータコアとして使用される電磁鋼板は、JIS,IECにより時間高調波を含まない正弦波励磁での鉄損計測であった。しかしモータコアとして使用される場合にはPWMインバータ励磁となる。このため、モータ形状によるコア損増加要因と、インバータ励磁によるコア損増加要因とは異なるものといえるため、上記でのコア損計測を無負荷損の条件にて系統的に行った。その結果、インバータ励磁による鉄損増加は4 %であったが、モータ形状によるコア損増加は17 %であった。これまでのモータコア損計測評価は、実使用条件のインバータ励磁下でのコア損計測を中心に行われていたが、これにより両者の分離が明確になり、モータの研究、設計の指針といえる。 更にモータコア損の更なる研究として、将来の半導体とされるWBG素子励磁時のモータコア損について、ナノ結晶モータコア損およびリンギング鉄損に関する研究を行った。従来のNOモータコア特性は、リング試料の結果と同様であったが、ナノ結晶材のモータでは、リンギング鉄損によるキャリア周波数特性が顕著に表れた。これは、ナノ結晶の極薄鋼板によるコア枚数の増加により、リンギング鉄損の影響が強く表れたものといえる。次に、インバータ励磁におけるデッドタイムを小さくすることで、キャリア周波数を500 kHzまで増加させたときにコア損特性について計測を行った。従来のキャリア周波数20 kHzまでは、リンギング鉄損の影響は顕著ではなかったが、500 kHzまで増加させると、リンギング鉄損の割合が全コア損の4割程度まで増加することが判明した。スイッチング損としてこれまでインバータ損に加え新たにリンギング鉄損の影響をも考慮すべきであることがいえる。
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