研究課題
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は,樹脂を炭素繊維で強化した複合材料である。CFRPは鉄やアルミなどの金属材料に比べて優れた強度と軽量性を有しているため,強度を保った上で軽量化が可能となる。そのため近年では,燃費軽減および二酸化炭素排出抑制を目的として航空機体への適用も進んでいる。航空機体に用いられているCFRP積層板は,繊維方向とその直交方向の導電率が著しく異なる非常に薄い層が,繊維方向を変えて数十層も重ねられている。このため,CFRP積層板を用いた航空機に雷撃が生じた場合,金属機体に比べて,雷電流分布が複雑になり,局所的に高い電界が発生する可能性がある。また,金属に比べて導電率が低いことに起因して,発生熱も高まり,さらに,機内に侵入する雷電磁界の振幅も大きくなると考えられる。燃料タンク近傍での高電界や高温の発生は,爆発に繋がる危険性があるため,耐雷対策が不可欠である。しかし,このような非常に薄くて異方性をもつ層構造のCFRP機体の耐雷設計は手探りの状態で,確立されるには至っていなかった。本研究では,時間領域有限差分(Finite-difference time-domain, FDTD)法に,導電率テンソルを導入することで,通常の立方体あるいは直方体セルを用いた解析においても,異方性をもつ層構造のCFRP機体をモデル化する手法を作成した。また,熱伝導率テンソルを適用した熱伝導方程式に基づく熱計算ルーチンをFDTD解析プログラムに導入することで,電磁界と熱の連成解析を行えるようにプログラムを高度化した。さらに,雷電流がCFRPパネルに流入した際の過渡電流分布および温度上昇分布が対応する実験結果と良好に一致することを確認し,開発した電磁界と熱の連成解析プログラムの妥当性を実証した。これにより,効率的なCFRP航空機の耐雷対策の立案を行うことが可能となった。関連した研究の成果は,国内外の論文誌に複数の雑誌論文として掲載されている。
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