研究課題/領域番号 |
18K04114
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
見市 知昭 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40368139)
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研究分担者 |
眞銅 雅子 大阪工業大学, 工学部, 講師 (10345481)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 直流コロナ放電 / 液中化学反応 / 活性酸素種 |
研究実績の概要 |
水上直流コロナ放電によって液中に供給された活性酸素種の化学反応の解明を目的として以下の実験を行った。 (1) in-situ赤外吸収分光分析システムによる計測では、ラピッドスキャンと高感度検出器の導入によりこれまで困難であったコロナ放電発生時から発生無しに切り替えた際の吸光度の時間変化を測定することが可能になった。これにより放電有りから無しに切り替わると全波数領域の吸光度がわずかに減少することを明らかにした。しかし目的の対象物質であるHO2ラジカルの検出はできなかった。 (2) 酢酸溶液中の各種濃度測定では、初期溶液のpHを変化させてオゾンと過酸化水素の濃度を測定した。溶液の初期pHを4, 7.5とした場合、pH4の方がpH7.5に比べていずれの濃度も高くなった。このことからpH7.5においてはオゾンと過酸化水素を消費する反応が優位になることが明らかになった。 (3) 汎用シミュレーションソフトを用いた液中でのOH生成過程の調査では、0次元シミュレーションを行い、その結果と実験結果との比較を行った。pH4の実験結果をもとにオゾンと過酸化水素の単位時間あたりの吸収量を求め、これを計算に用いた。オゾンと過酸化水素が液中に供給されるモデルでは、酢酸濃度の時間変化は似た傾向を示したが、オゾンと過酸化水素濃度の時間変化は異なる傾向を示した。新たに検討したオゾンと過酸化水素とO3-などの負イオンが供給されるモデルでは、酢酸、オゾン、過酸化水素濃度の時間変化はいずれも実験結果と同じ傾向を示した。 (4) BTB溶液を用いた液中のイオン生成分布の観測では、負極性直流コロナ放電を液面に照射して、色の変化を調べた。酸素雰囲気では、平板電極側が酸性への変化を表す黄色に変化し、液面では変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の検討事項は、気相中での赤外吸収分光測定と液中の化学反応シミュレーションであった。赤外吸収分光測定では直流コロナ放電においては、目的とするHO2ラジカルの検出はできなかった。一方で液中の化学反応シミュレーションでは、実験結果と似た傾向を示す新たなモデルを見出すことができた。また、液面へのコロナ放電照射を理解するために新たにBTB溶液を用いたイオン生成分布の観測を行った。これによりコロナ放電を照射することでイオン電流が気相から液相に侵入していることが明らかになった。この成果は静電気学会誌に投稿し掲載可となった。以上のことから当初の計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度は液中化学反応シミュレーションの結果と実験結果を比較検討した論文を投稿する。また、BTB溶液を用いたイオン生成分布の計測を継続して行う。針電極を一本にするなどシンプルな放電リアクタを製作し実験を行う。さらにシミュレーションについては、気相であるコロナ放電電極近傍での計算を行い、液面に到達する活性酸素種の濃度について検討を行う。 次に赤外吸収分光分析システムを用いたHO2ラジカルの計測を継続する。水上直流コロナ放電では生成を確認できなかったため、水蒸気を含むオゾンガスにUV照射した条件で計測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた実験が問題なく遂行でき、追加のリアクタ製作が不要となったため。翌年度では新規の実験を行うためのリアクタ製作費として使用する。
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