直流コロナ放電を液面に照射すると活性酸素種がイオン風によって液中に供給され、液中反応を経てOHラジカルが生成する。本研究ではコロナ放電によって生成した気相中のHO2ラジカルがOHラジカル生成のキー物質の一つと考え、赤外吸収分光計測を行った。FTIRにラピッドスキャンと高感度検出器を導入し150ms間隔での連続測定を行ったが、コロナ放電発生時から発生無しに切り替えた直後においても吸光度スペクトルに大きな変化は見られず、HO2ラジカルの検出はできなかった。 次にコロナ放電によって気相から液中に供給された複数の活性酸素種の化学反応についてシミュレーションによる解析を行った。具体的には酢酸水溶液に活性酸素種が供給される0次元のモデルで各種濃度の時間発展を求め、実験結果と比較した。その結果、コロナ放電によってオゾンと過酸化水素が液中に供給されるモデルでは、酢酸濃度の減少は実験結果と比較的近くなったが、オゾンと過酸化水素の濃度の時間変化は異なる傾向を示した。 そこでオゾンと過酸化水素に加えてコロナ放電で生成する負イオンが供給されるモデルで計算を行った結果、酢酸、オゾンおよび過酸化水素の濃度の時間変化は、より実験結果に近づくことが明らかになった。特に負イオンをO3-とした時に最も実験結果に近い値となった。なお、オゾンと過酸化水素の供給量は実験で測定した濃度より算出し、負イオンの供給量については放電電流からファラデー定数等を用いて算出した。 以上のことから、直流コロナ放電を液面に照射することで、オゾンと過酸化水素が液中に供給されるが、それ以外にO3-などの負イオンが含まれる可能性を見出した。キー物質と予想していたHO2ラジカルは、本研究では検出することができなかったことから極めて濃度が低い可能性がある。
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