研究課題/領域番号 |
18K04115
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
石田 弘樹 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (50413761)
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研究分担者 |
古川 裕人 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30238670)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ワイヤレス給電 / ロバスト性 / パリティ・時間対称性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高いロバスト性能を有する新規のワイヤレス給電システムを開発である。ワイヤレス給電システムの主要な構成要素であるカプラとカプラの駆動電源の開発を中心に行う。カプラについては、数kHzの低周波で駆動させることで伝送空間に金属片などの導電性の異物が入り込んでも安定した出力電力を得られるように新規のカプラを開発する。また、電源については、スタンフォード大学のシャンフィ・ファン氏らが提案したパリティ・時間対称性に基づいたワイヤレス給電システムを参考にし、負性抵抗を用いた発振器を交流電源として利用することで駆動周波数の高速での自動追尾の実現を目指す。研究期間の1年目である本年度は、研究実施計画に従い、電磁界数値計算により、伝送空間に導電性の異物が入り込んだ場合の電磁界の過渡的な応答を数値解析し、カプラ間の磁気結合係数の時間領域での変化を調べた。尚、これらの研究成果は、学術論文1件、および学会講演1件にて公開した。また、シャンフィ・ファン氏らが提案しパリティ・時間対称性に基づいた発振回路は、高周波駆動、微弱電力であり電力変換効率も低いことから、本研究では、高出力かつ高電力変換効率の発振回路の開発に取り組んだ。その結果、負性抵抗発振回路にパワーオペアンプを用いることで、数kHzの比較的低い周波数で電力変換効率50%を越える回路を構築することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロバスト性を向上させるためには、カプラが置かれている空間の環境変化にともなう電磁界の変化を高時間分解能で解析する必要があった。例えば、伝送空間に金属製の異物が混入した場合、異物の侵入に対してカプラ間の磁気結合係数がどのように変化するかを明らかにする必要があった。そこで、本年度は専用シミュレータの開発を行い、電磁界の時間領域解析により磁気結合係数の変化を明らかにすることに成功した。最終的な目的である伝送空間に金属製の異物が混入した場合でも出力電力を安定させるには、金属製の異物での電力損失分と磁気結合係数の低下による入力電力の増加分とが一致するようにカプラを設計という設計指針を見出すことができた。そのようなカプラの設計には、今年度に開発した専用シミュレーターを用いるため、研究の進捗状況は順調である。また、ファン氏らが提案したパリティ・時間対称性に基づいたワイヤレス給電システムを発展させより実用的にするため、パワーオペアンプを使った低周波の負性抵抗発振回路を構築しワイヤレス給電の電源として応用できることを確認した。この点に関しても順調に研究が発展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
カプラの開発に関しては、伝送空間で電力損失(漂遊負荷損)が、磁気結合係数の低下による入力電力の増加分と一致するような形状のカプラを設計、製作する。実現すれば、給電カプラを定電圧駆動するだけで伝送空間に異物が混入しても出力電力は常に一定になるように自発的に制御されると考えている。また、今年度開発した負性抵抗発振回路に適応した1kHzから2kHz程度を駆動周波数とするカプラを新たに作製する。 負性抵抗発振回路に関しては、正常な動作までを確認したことから、次のステップとして伝送距離変動に対する自発的な周波数の追尾を実現を目指す。 研究期間の最終年度には、新規に開発したカプラと負性抵抗発振回路を組み合わせて、高ロバストなワイヤレス給電システムの実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
電子部品としてパワーオペンアプを購入したが、当初の見込みより少ない3個のみの購入で目的を達成したため、残高が発生した。残高は、来年度に電子部品や電子材料を購入するために利用する。
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