研究課題/領域番号 |
18K04115
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
石田 弘樹 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (50413761)
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研究分担者 |
古川 裕人 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30238670)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ワイヤレス給電 / 高ロバスト / パリティ・時間対称性 / 負性抵抗発振 |
研究実績の概要 |
2年目となる今年度は、初年度において高ロバストを実現するために検討を行った2つ要素技術を具体化し、高ロバスト・ワイヤレス給電システムの構築を行った。 1つ目の要素技術、給電カプラおよび受電カプラについては、ロバスト性と小型化を両立するため駆動周波数帯を15kHzから20kHzと比較的低い周波数帯を採用した。磁性コアには、低周波において高い透磁率と飽和磁束密度を有するマンガン亜鉛フェライトを用いた。また、低周波を用いることで巻線の表皮効果の影響を最小限に抑えることができ、巻線には0.4mm径の単芯線を用いることができた。これにより15kHzから20kHzの駆動周波数帯において100(最大111.5)を超えるコイルの品質ファクタ(Q値)を実現した。また、試作した2種類のカプラ重量は、それぞれ10W出力タイプが39g、5W出力タイプが22gと軽量化も同時に達成した。 2つ目の要素技術である制御方式については、パリティ・時間対称性ワイヤレス給電を基盤とした。低周波数において大きな出力電力を得るために高電圧駆動用のパワーオペアンプを用いた負性抵抗発振回路を用いた。この負性抵抗発振回路とカプラを組み合わせることで15kHzから20kHzの周波数帯で安定して動作するワイヤレス給電システムの構築に成功した。カプラ間の距離(伝送距離)が急激に変動した場合のおいても、パリティ・時間対称性が有効に作用して駆動周波数が最大効率と一定出力を保持するように自発的に調整された。特に伝送距離に関しては、磁極面積(400 mm^2)の平方根の長さに相当する伝送距離(20 mm)まで出力電力をほぼ一定に保つことに成功した。また、出力電力は目標とおり5Wおよび10Wを実現した。システムの総合電力効率に関しては50%以上を達成した。以上のように、2年目において当初目標としていた伝送性能をほぼ達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は実施計画に従い実施され、当初計画において目標としていた成果を達成することができた。研究初年度においては、パリティ・時間対称性ワイヤレス給電を基盤として、この新しい技術を低周波のスキームで実現するための要素技術に関して理論解析やコンピュータシミュレーションからアプローチしてきた。本年度(2年目)は、初年度に得られた知見を基にシステムの設計と構築を行った。その結果、15kHzから20kHzの低周波数帯においてパリティ・時間対称性をシステムに与えることに成功した。これまでパリティ・時間対称性ワイヤレス給電は20MHz帯の高周波でしか実現しておらず、本研究の成果は大きな進歩をもたらしたと考えられる。また、構築したシステムの伝送性能は、結合モード理論より計算した計算値と良く一致し、設計通りの性能を得ることができた。得られた性能は当初目標をほぼ達成していることから研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
残された課題としては、システムの電力効率にある。本研究では、現時点において総合電力効率50%以上を達成している。この値は、先行研究(S. Assawaworrarit et al, Nature, 546, 387(2017))の約10%からすれば劇的に進歩しているが、実用性という観点からすれば、より高効率が望まれる。最終年度である3年目は、電力効率の向上をさらに進める。具体的な手法として以下の2案を検討する。1)現時点で採用しているパワーオペンアプを用いた負性抵抗発振回路(アナログ回路)の更なる高効率化を進める。2)FETもしくはIGBTを用いたスイッチングモードアンプによって負性抵抗発振回路を実現し、電力効率を改善を図る。以上の2案を並行して進め、より有効な手法を選択しシステムを完成させる。。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として予定していた学会(東京3箔)が新型コロナウィルス流行の影響によって中止となったため旅費が執行できなかった。その他の費目として論文の登録料の支払いを予定していたが、投稿した論文(SN Applied Sciences)は登録料が要らなかったため残った。以上の理由により生じた残高は、来年度のさらに高性能化を進めるための実験等の消耗品として有効に活用する。
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