当初の研究目的であったパリティ・時間対称性の原理を取り入れた新規のワイヤレス給電システムの開発に成功し、研究目的をほぼ達成することができた。 具体的な研究成果としては、20kHz程度の低周波領域においてもパリティ・時間対称性が保存できる電磁コイルのパラメータを見出した。先行研究において提案されたシステムから低周波数化することで、伝送距離の変化に対する堅牢性が優れた高ロバスト・ワイヤレス給電システムを実現することができた。また、低周波化によってパワーオペアンプを負性抵抗発振回路の中核となる部品に使うことができるようになり、10Wを超える出力電力を得ることに成功した。さらに、研究開始当初は、負性抵抗発振回路の電力変換効率は10%程度と低かったが、電磁コイルの最適な設計や負性抵抗発振回路の効率改善などにより70%まで改善することができた。本システムの概要、およびこれらの研究成果は学術論文として発表した。 研究を進めていくなかで、負性抵抗発振回路の発振安定性、および発振振幅値が定常状態に至るまでの時間(応答速度)が応用上の課題になることがわかった。この課題を解決する手段として、発振回路内に発振の種となるノイズ源を設ける方法を考案した。本方法の妥当性と効果を回路シミュレーションおよび実験より詳細に検証し、学術論文として発表した。また、本研究で考案したワイヤレス給電システムは過去に類似の報告や特許が無かったことから特許出願を行った。以上の研究成果により、本研究は当該研究分野の発展に貢献したものと言える。
|