本研究の目的はマルチバンド平面アンテナである多リング形マイクロストリップアンテナの素子上にバラクタダイオードを直接装荷することにより、複数の周波数で利用でき、かつ、電子的な共振周波数の制御を可能とする新しい平面アンテナを提案し、その諸特性を明らかにすることである。 令和2年度はバラクタ装荷周波数可変多リング形マイクロストリップアンテナの小型設計および円偏波設計に関して以下の検討を加えた。はじめに、一層の誘電体基板を用いて構成された周波数可変平面アンテナの小型設計を目的として、リング形素子の零電位面にリング形素子と地導体を短絡するビアを設置することでリング形素子の面積を半分に削減し、さらに、Lプローブを中心として左右に分割された素子の一方を削減することにより、素子面積をリング形素子の1/4とするアンテナ構造に着目した。次に、二層構造の誘電体基板を用いて構成された周波数可変平面アンテナの円偏波設計を目的として、リング形素子の各頂点に計4個のバラクタダイオードを装荷することにより円偏波となる周波数の制御を可能とするアンテナ構成に着目した。 小形設計に関しては素子面積をリング形素子の1/4に小型化した放射素子を2素子配置した2周波共用周波数可変平面アンテナ、円偏波設計に関してはリング形素子を1素子配置した単周波の円偏波周波数可変平面アンテナを試作し、これらのアンテナの周波数制御特性および放射特性について検討した。その結果、小型設計された2周波共用周波数制御アンテナは素子面積の小型化に伴う利得の低下が見られたものの周波数制御特性はほぼ維持されること、円偏波設計された周波数制御アンテナはリング形素子の対角の頂点にある2組のバラクタダイオードのバイアス電圧を適切な組み合わせで制御することにより、円偏波を放射する周波数の制御が可能であることが明らかにされた。
|