研究課題
カプセル内視鏡における問題点の一つとして,駆動源の問題があり,撮影できる枚数制限,内蔵電池から漏れ出した電解液が人体に悪影響を及ぼすなどのリスクなどといった課題がある.この問題に対し,電磁波方式を用いた体外からの電力伝送の技術の開発を提案している.さらに,提案している方法は画像データの送受信と無線による電力の供給を同一のアンテナで行えるため,カプセルの省スペースができることもメリットとして挙げられる.本研究では,無線電力伝送に用いるためにはリアルタイムでの位置推定が必要であり,低演算で実現可能な位置推定システムの検討を行った.433.92 MHzにおいて,体外アンテナとして,帯域が広く円偏波を放射することができる2線式スパイラルアンテナ,体内(カプセル)アンテナとして,カプセル内に入るサイズであるヘリカルアンテナを用いて,位置推定シミュレーションを行った.提案している位置推定アルゴリズムは,人体の組織構造による推定誤差が少ない受信信号強度を用いた位置推定方法で,さらに受信アンテナの受信角度特性を考慮して,位置を補正する推定アルゴリズムの開発を行った.また,カプセル内視鏡は体内で位置だけではなく,向きも変化するため,カプセルの向きが不明でも位置推定できるアルゴリズムの開発を行った.その結果,小腸の想定範囲内において本来の位置との誤差40 mm以内を達成することができた.位置推定アルゴリズムの評価を行うため,人体模擬ファントムの開発を行った.人体模擬ファントムは,筋肉を模擬した固体ファントムと,小腸内でのカプセルの移動を模擬できる液体ファントムで構成している.カプセルから送信を行い,体外の受信アンテナでの受信電力を基に位置推定を行った.受信アンテナの角度補正を導入しない受信信号強度だけの位置推定を行った結果,実際のカプセルの位置と推定位置は,全体の6割程度の一致をみた.
1: 当初の計画以上に進展している
人体簡易モデルによる位置推定アルゴリズムの開発に関しては,当初の予定より進捗が早く進んでおり,フルペーパーにすることができた.アンテナ開発については,ほぼ予定通り進んでいる.人体組織を考慮した位置推定アルゴリズムの開発に関しては,来年度後半から開始予定であるが,先行して人体組織のモデル化などシミュレーション環境をほぼ整え終わったため,予定通り来年度から開始できると考えている.ファントムを用いたシステム評価については,最終年度に行う予定であるが,今年度に人体簡易ファントムの開発,初期のシステム検証が行えたため,最終年度には,さらに精度の高いファントム開発ができる見込みがついた.
人体簡易モデルにおける位置推定アルゴリズムは,ほぼ達成できたため,実験による検証と人体組織を考慮した精度向上のための研究に注力していく.今後の研究の推進については,当初予定通りに進めて行く.来年度は,まず,体内アンテナの高効率化および体外アレーアンテナのシステム化などを行う予定である.位置推定にあたって,受信システムのダイナミックレンジ確保が大きな鍵となっているため,アンテナの効率向上と体外アレーアンテナの最適な配置が重要になってくる.そのため,体外アレーアンテナの最適な数や配置を決定し,その制御方法などの検討を行う計画である.また,人体組織を考慮し,今年度開発した位置推定アルゴリズムの有用性の確認を計算シミュレーションにて行う.特に他の臓器の近辺など,電気定数が大きく異なる環境での位置推定精度が問題になると考えている.さらに,そのシミュレーション結果を基にアルゴリズムの改良を行っていく予定である.最終年度では,人体組織を模擬したファントムを開発し,開発した位置推定アルゴリズムの実証実験を行う計画である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
IEICE TRANSACTIONS on Communications
巻: vol.E102-B, no,8 ページ: 印刷中
10.1587/transcom.2018EBP3328