研究課題/領域番号 |
18K04124
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
梅林 健太 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20451990)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 周波数共用 / 周波数利用観測 / 周波数利用率モデル化 / コグニティブ無線 3.研究課題名 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、広帯域における様々な周波数帯の観測を行い、①:ノンパラメトリックベイズモデルによる確率的モデル化,時間軸の利用率の変動に関する。②:決定論的モデル・AR-MA(自己回帰移動平均)モデル,そして③: モデル化の周波数軸汎化に取り組み,周波数利用に関する詳細で精度の高い統計情報を取得する技術の確立を目指す。さらに、得られた統計情報を周波数共用において活用し、その効果も確かめる。 2019年度は①に関して、詳細な検討を行い、その手法の妥当性を確認した。ノンパラメトリックベイズモデルでは混合数と各混合分布のパラメータを推定する必要があり、その中で事後確率がアルゴリズムのメトリックとして採用されている。しかしながら、事後確率は中華料理店過程においてよりクラスターごとの混合数によりばらつきを持たせる傾向があることから、得られた分布と経験的な分布に比較的大きなギャップがあることから常に適切ではないと考えられる。そこで、カルバック・ライブラー情報量を用いた場合に、精度と繰り返し処理(ギプスサンプリング)の収束判定が適切に出来ることを確認した。しかしながら、カルバック・ライブラー情報量はクラスター数が多いほどより精度が高いと判断することから、オーバーフィッティングを起こす可能性があることも確認した。②においては、AR-MA及びディープラーニングを用いた利用率の時間方向のモデル化に取り組んできた。AR-MAを用いた場合、より時間分解能を落として利用率を予測することでより精度の高い予測が可能となることが確認できた。一方で、ディープラーニングを用いた場合は、利用率そのものの特徴のみならず、利用率の他の特徴量を用いることで予測の精度を改善できることが確認された。③に関しては、上記の検討を複数の帯域・時間帯においてそのモデルの妥当性を確認することで、汎用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した課題に取り組み、それぞれの課題解決をほぼ達成したことから「おおむね順調に進展している」と判断した。 具体的には、2019年度は各モデル化の検討において詳細な検証を行ってきた。①に関しては、そこで用いられているモデルの評価及びアルゴリズムの収束を判定するのにカルバック・ライブラー情報量を用いることが有用であることを明らかにした。②に関しては周波数利用率の予測法の各種特性を明らかにしつつ、新たな統計情報を付加し、さらに時間分解能を変更することでその精度が変わることを確認してきた。そして③では複数の時間帯及び周波数帯において提案のモデル化が有用であることを確認することでその有用性を確認してきた。 周波数利用の予測においては、線形及び非線形のアプローチで取り組んできたが、時間分解能が細かい場合はその精度に限界があることが確認された。よって、新たな取り組みが必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
①に関しては、論文にまとめるとともに、統計情報を周波数資源の割り当てにおいてその有用性を明らかにする。具体的には、その確率的な分布と共にその時間軸に対する変化から周波数資源を適切に割り当てる手法の開発に取り組む。②に関しては、これまで周波数利用率の時間軸における予測を行ってきた。今回は、周波数利用のアプリに着目し、トラフィックが今後増加する恐れがあることを予測する手法の確立にも取り組む。この手法を開発することで、時間軸での細やかな利用率の予測ではなく、直近の周波数利用率の増加を予測できることが期待される。③に関しては、実証実験を通して、これまでの研究成果の妥当性を明らかにする。
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