研究課題/領域番号 |
18K04126
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青柳 貴洋 東京工業大学, 工学院, 准教授 (10302944)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ボディエリアネットワーク / 電波伝搬チャネルモデル / モデリング / 機械学習 / シナリオディエンベッディング / シャドウイング / アイオーティー / モーションキャプチャー |
研究実績の概要 |
本研究は、人体の周辺において生体情報等の伝送に用いる無線通信ネットワークである、無線ボディエリアネットワーク(WBAN)の新たな電波伝搬チャネルモデリングの手法に関するものである。体表に設置したセンサーノードからのデータを、人体の主要部に取り付けたコーディネーターノード、さらには体外に設置されたアクセスポイントへデータを伝送するネットワークを想定している。人体の周辺では、電波の伝搬状態が人体の動作により刻一刻と変化するため、これを動的にモデリングすることが重要となる。従来行われていた動作の種類毎のモデリングでは必要な実験数が膨大になってしまう。そこで、本研究では、動作のシナリオをチャネルから分離するための手法を提案している。本年度は、シナリオディエンベッディングのための実測データ収集のための人体動作ー無線信号同期測定システムの開発を行った。まず、人体表面上の2点間の電波伝搬(伝搬ロス)を測定するため、小型のBluetooth Low Energy機器によるRSSI(受信信号橋度)測定を行うシステムを開発した。これにより、1秒間に100サンプルの分解能でのRSSIの時系列変化を実現した。また、人体動作を時系列で測定するために、モーションキャプチャーシステムを利用した。RSSIと人体動作それぞれの測定を時系列で同期させるために、同期のための人体動作と同期アルゴリズムを考案した。これにより、秒間100サンプルの分解能で同期したRSSIと人体動作のデータを取得することが可能となった。さらに、取得した人体動作の時系列データからRSSIを予測するモデルを機械学習により作成した。これにより、0.1秒後のRSSIを2秒間の人体動作のデータから予測することに成功した。これらの成果を応用し、今後、シナリオディエンベッディングに向けた自動チャネルモデル生成について検討をすすめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題については概ね順調に進展している。2021年度は、シナリオディエンベッディングの研究を進める上で重要となる、人体動作と無線信号の受信信号の同期測定を可能とするシステムを開発した。また、人体動作と受信信号橋度の同期測定を試みた実験で得られた時系列データから、人体動作をパラメータとして受信信号橋度を予測する機械学習モデルの生成を行うことが出来た。これらの成果は、シナリオディエンベッディングを実現する上で必要となる自動的なチャネルモデル生成につながるものであり、今後研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において決定論的なモデルの検討、2年目においては統計的に表現が可能な伝搬チャネル成分の検討を行い、さらに3年目において、大量の人体姿勢をシ ミュレートするための人体姿勢モデル生成手法を確立した。4年目においては、実測のための人体動作ー受信信号強度同期測定システムの開発と初期的なモデリングの試みを行った。本年度は、シナリオディエンベッディングを目指した自動チャネルモデル生成を目標として、実測データを集めるとともに、人体モデル生成プログラムによる電磁界シミュレーションによる検討も進める予定である。大量の人体姿勢と受信強度のデータを機械学習によりモデリングすることにより、シナリオを分離する手法、さらにはチャネルモデリングをデータから自律的に行う手法について研究をすすめ、シナリオディエンベッディング手法の実現を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までcovid-19の影響により想定していた国際会議が中止や延期となり国際会議での発表機会がなかった(本年5月開催の国際会議へオンライン参加予定である)。また、対面で行う実験について制約があり、シミュレーションによる検討をすすめてきたが、人体を用いた実験について基本的な測定を行うことができたため、本年度については、実験についてcovid-19対策を行いながら進める予定である。発表については状況により、上述の国際会議の他、オンライン会議、可能であれば対面での会議への参加を検討する予定である。
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