本研究の目的は、電池いらずで動作し続ける無線充電医療センサーを実現する偏波制御DRレクテナの開発である。これを実現するための課題は、①電波を直流に変換する整流器の高効率化、②人体装着時に生じる人体の動きとセンサーに到来する電波の偏波特性の相互作用による受信電力の低下、③人の歩行動作に起因する電波シャドウイングによる激しい信号瞬時遮断現象の克服の3点である。 2020年度は、高いQファクターを有する同軸誘電体共振器を用いた新しいレクテナを腕振りのみならず脚振りも考慮できる電磁ファントムの腕に装着して無線電力伝送実験を実施した。30分間充電した時の充電電圧は0.37Vとなり、従来レクテナの0.32Vと比較して0.05V向上した。この要因は高いQファクターの同軸誘電体共振器を用いたことによるRF-DC変換効率の向上によるよるものである。 受信アンテナとして半波長ダイポールアンテナを用いた結果、腕の角度が0度(地面に対して垂直)の時と比較して、腕の振り角が大きくなると充電電圧が劣化することを確認した。この原因は送信電波と受信アンテナの偏波ミスマッチが原因である。そこで、腕の角度に応じて受信アンテナ偏波を制御できる偏波制御アンテナの開発を実施した。その結果、3つのPortとも-3dBd以上の利得を実現できることが明らかとなった。従って、腕の角度を関数とする重み付け制御により高いアンテナ利得を維持できることが期待できる。しかしながら、開発した偏波制御アンテナは設計周波数2GHzにおいて地板サイズが10cm×10cmと大型であり、同軸誘電体共振器の共振周波数900Hz帯への適用を考えると、小型化を実現しなければならない。偏波制御アンテナの小型化は今後の課題である。
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