研究課題/領域番号 |
18K04131
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
西新 幹彦 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90333492)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 情報源符号化 / 符号化遅延 / 符号化レート |
研究実績の概要 |
令和元年度は符号化の遅延に関して、前年度に引き続き主に2つのアプローチから研究を進めた。一つは(1)演算精度の低い算術符号の構成法に関してであり、もう一つは(2)レート歪み理論の遅延解析への応用である。 (1) 算術符号の精度とは、符号化確率を量子化して2元表現する場合のビット数のことである。前年度までの研究で、間接的なパラメーターと繰り返しアルゴリズムを使わずに2つの状態を同時に最適化する手法を発見した。本年度はそのアルゴリズムの評価を行った。 まずは計算量に関する評価を行った。情報源として一様分布の情報源シンボルを用いた。時間の尺度としてこのアルゴリズムが実行されている最中にノードリストからノードを選ぶ回数を数えた。使用メモリの尺度としてはこのアルゴリズムが終了した時にノードリストに残っているノードの数を数えた。このような実験的な評価の結果、このアルゴリズムは2進木であって最大でも2つの子ノードが1つの親ノードで構成されているため、残りのノード数とノードを選ぶ回数はほぼ等しいということが明らかになった。 次に探索アルゴリズムにより得られた順序保存性のない最適な算術符号と従来の順序保存性のある算術符号の平均符号語長を実験的に比較した。その結果、情報源が一様分布であれば平均符号語長に変化はなかった。情報源に偏りがある場合では従来の算術符号よりも小さい平均符号語長を得られることがわかり、順序保存性を課さないことが性能の向上に寄与することが確認された。 (2) レート歪み理論を応用してレートと遅延の関係を数学的に解析した。前年度までに整合性をもった符号を用いた場合のレートと遅延の関係を示す一般的な定理の証明をしている。本年度は具体的な情報源に対するレート遅延関数を閉じた式によって表現することを試みた。典型集合を導入することによって順定理を示す方法はほぼ見通しがついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時点では遅延の解析に対して3つのアプローチを考えていたが実績の概要で述べた通りそのうち2つで成果が得られた。また、3つのアプローチがすべて揃わなければ研究の目的が達せられないわけではない。したがっておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた(1)については、順序保存性のない最適な算術符号と準瞬時符号との密接な関係が分かってきておりその関係について詳細に検討して整理する必要がある。 (2)については引き続き検討を重ね、レート遅延関数の閉じた式での表現を導出することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の発生については、当初計画で見込んだよりも安価に研究が遂行できていること、具体的には高価な高性能乱数生成器や解析用ソフトウェアを購入することなく実験およびデータの解析ができていることが挙げられる。すでに実験用計算機を発注済みである。また研究成果の位置づけを正確にまとめるためにも最新の研究状況を把握するために研究会等への参加も予定している。
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