研究課題/領域番号 |
18K04135
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
菊間 信良 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40195219)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | MIMOレーダ / ターゲット方向推定 / 仮想アレー / オーバーラップ素子 / ESPRITによる送信誤差補正 / 圧縮センシング / 1スナップショット処理 / FOCUSSアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では,自動運転を支える車載MIMO (Multiple-Input Multiple-Output) レーダの送信側に,空間領域,角度領域,符号領域の仮想アレー化技術を適用することにより,ターゲット推定性能を向上させることを目的としてきた.受信側の仮想センサ(アンテナ)アレーの素子配置が多次元化されると,ターゲットの位置など様々な情報を得ることができる.2019年度の具体的な成果を以下に述べる. (1) 同一信号切替方式を用いたMIMOレーダでは送信信号に位相誤差,振幅誤差が発生する.本研究では,そのMIMOレーダの仮想アレーにおいてオーバーラップ素子を用いた誤差の補正法を検討した.またアルゴリズムの工夫によってターゲット方向推定精度の向上を図った.固有ベクトル補正法,ESPRIT補正法,および補正なしESPRIT法の3つの推定手法を比較した結果,ESPRIT補正法,補正なしのESPRIT法が優れた性能を示した.続いて,2ターゲットの分離特性を比較した結果,補正なしESPRIT法の分離精度が最も高いことが示されたが,方向推定精度に関しては,ESPRIT補正法の方が高いことが確認された. (2) 近年注目されている圧縮センシングをMIMO レーダに用いることで,受信アレーの1スナップショットによるターゲット方向推定の実現と精度向上を図った.圧縮センシングの代表的アルゴリズムであるISTA,FISTA,FOCUSSの性能を評価するために,MUSIC法などの従来法と比較検討した.さらに,素子配置として一様配置(ULA)と最小冗長配置(MRA)の比較を行った.その結果,圧縮センシングではULAよりMRAの方が,高い推定精度を得られることが確認できた.更に,角度スペクトラム,推定精度,演算時間,ターゲット検知確率の全ての点から,FOCUSSの分離性能が最も高いことが示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハードウエア的に簡易な同一信号切替方式を用いたMIMOレーダの仮想アレーにおいて,切替の際に発生する信号の振幅誤差と位相誤差を低減する方法を提案し,その有効性を確認できた.これはMIMOレーダの空間領域(アレー開口)の拡張,すなわち角度分解能の向上に大きく貢献するものである.また,車載レーダの条件として,少ない時間サンプル(スナップショット)で速やかに処理することが要求される中で,圧縮センシングにより1スナップショットでターゲット方向を推定できることを示したことは大変有意義な結果である.今後の研究の方向性が示されたと言える.
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 車載MIMOレーダ用推定アルゴリズムの高性能化 MIMO レーダ用推定アルゴリズムとしてパラメータ非探索型のESPRIT法や DOA-Matrix法に基づく推定手法を提案したが,引き続き,その特性の改善を行っていく.また,1 スナップショット(1 サンプル)で推定可能な圧縮センシングのMIMOレーダにおける適用可能性が確認できたので,その基本特性を明確にしつつ改良を行っていく亜.更には,ESPRIT法やDOA-Matrix法との併用についても探る. (2) MIMOレーダの受信アレーの仮想多次元化 MIMOレーダの送信側で,空間領域,周波数領域,角度領域,符号領域など多次元にわたる送信多重技術について検討してきたが,引き続き,多次元送信技術を用いて観測データ(仮想センサアレー)を多次元化し,より高い効率と精度で推定できる方式の実現を目指す.特に仮想アレーの2次元配列化を行うと,ターゲットの方位角と仰角の推定が可能となり,水平方向のみならず垂直方向においてもターゲット検知が出来るようになる.更には,送信側のマルチアンテナに適応ビーム形成機能をもたせることにより,個々のターゲットの大きさなどの特徴抽出をより精度良く行うことができる可能性が高くなるので,その実現可能性と有効性を探る. (3) 電磁界シミュレータを用いたMIMOレーダの総合評価 有限要素法とレイトレーシング法を基本手法とする電磁界シミュレータHFSSを用いた自動車の方向推定を行う.シミュレーション環境の構築を行った後,本研究で提案した推定アルゴリズムの有効性を総合的に評価する.また,新たな課題が発生した場合は,アルゴリズムの改良へとフィードバックさせる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度の成果報告の一部とする予定である.
|