研究課題/領域番号 |
18K04140
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
梅原 大祐 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (50314258)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 成功優先ランダムアクセス / スロットアロハ / IEEE 802.11 DCF / 非持続型CSMA / バックオフアルゴリズム / 伝送効率向上 / エネルギー効率向上 / スケーラビリティ向上 |
研究実績の概要 |
送信成功した無線端末のみが優先される成功優先のコンセプトをランダムアクセスプロトコルであるスロットアロハ,IEEE 802.11 DCF,非持続型CSMA (NP-CSMA)に適用した. 成功優先スロットアロハにおいては,付加的な物理層技術を導入することなくスロットアロハの限界値である 1/e=0.368 を大幅に越えるスループット(伝送効率)が得られることを理論解析及び計算機シミュレーションにより明らかにした.また,スループットを最大化するコンテンションウィンドウ値が解析モデルより導出可能であることを示した.さらに,無線LAN端末の送信モード,受信モード,スリープモードの測定消費電流値をもとに,平均消費電流値を導出した結果,成功優先確率が高いときに,従来のスロットアロハより低い消費電流値が達成されることを理論解析及び計算機シミュレーションにより明らかにしている. 2進指数バックオフアルゴリズムを採用する無線LANのIEEE 802.11 DCFにおいては,成功優先のコンセプトを導入することで,スループットが向上し,フレーム廃棄率が低減することを理論解析と計算機シミュレーションにより明らかにした.さらに,従来の無線LAN端末との混在環境下においても従来の無線LAN端末と比較してスループットの低減やフレーム廃棄率の増加が生じないことを解析モデル及び計算機シミュレーションにより明らかにしている. 無線チャネルがビジーと判定されるときにコンテンションウィンドウを倍増させる2進指数バックオフアルゴリズムを採用したNP-CSMAにおいては,成功優先のコンセプトを導入することで,伝送効率とエネルギー効率の双方が向上するという理論解析結果と計算機シミュレーション結果が得られた.また,提案する2進指数バックオフアルゴリズムによりスケーラビリティの向上が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,スロットアロハ,IEEE 802.11 DCF,非持続型CSMA (NP-CSMA)の三種のランダムアクセスプロトコルに対して,成功優先のコンセプトを導入したバックオフアルゴリズムを提案し,それらのアルゴリズムに対して性能解析モデルを導出した.我々が狙いとする大規模ワイヤレスネットワークに対して,性能解析モデルによる性能解析結果と計算機シミュレーション結果は伝送効率とエネルギー効率を含む性能指標において精度良く一致することを示すことができた.特に,NP-CSMAにおいては,フレーム衝突をベースとした2進指数バックオフアルゴリズムではなくフレーム衝突を含むチャネルビジー検出をベースとした2進指数バックオフアルゴリズムを採用することにより,トラヒック変動が生じるワイヤレスネットワークにおいても自律分散的に適切なコンテンションウィンドウ値に収束するという新たな知見が得られた.屋内同期信号としてGPS再放射システムを実験室に導入して,現在,これらのランダムアクセスプロトコルを実装するための準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
理論面では,特に成功優先ビジー倍増バックオフアルゴリズムを適用したNP-CSMAにおいて見られた,アクティブなノード数が少ない領域における理論解析結果と計算機シミュレーション結果の不一致に関する考察を進めていく.現時点では,異なるコンテンションウィンドウ値におけるチャネルビジー検出確率を一定としている仮定が不一致の要因として考察しているが確証が得られていない.シミュレーション面に関しては上位層であるTCP層を含めた性能評価を進めていく.実装面においては,ソフトウェア無線デバイスであるUSRPに対して各種のランダムアクセスプロトコルの実装を進めていく.
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