非線形プリコーディングを適用した物理層ネットワークコーディング(XOR-PLNC)による、2ホップ双方向無線中継ネットワークの高速化および、中継端末における信号検出処理の低演算量化を達成した。その詳細を以下に示す。 (1) 高速化のための多値変調の適用と演算量低減:多値変調を適用しても中継局の処理を簡易化できる新しい、ストリーム毎利得制御法を提案した。これにより中継局の信号検出が領域判定だけで実現でき、演算量を数百分の1に低減できた。加えて、誤り訂正を導入するための新しい符号化変調方式も提案した。新しい符号化変調方式では、中継局の演算量の増大を避けるため、多値変調信号の下位ビットを符号化する。中継局では、2つの端末から到着した信号の符号化ビットと非符号化ビットのXOR符号化ビットを各々、独立に復号する。16QAMおよび256QAMを適用した場合でも、BER=1.0E-4点において2dB程度の利得が得られた。 (2) 中継局と端末アンテナ数が不均一な無線中継ネットワークへの拡張と高速化:中継局が分散しており、相互の信号交換が困難な無線中継ネットワークを対象に、物理層ネットワークコーディングに適した中継局アンテナ選択法を提案した。提案法は二つの端末と中継局間の、2つの通信路に着目し、この二つの通信路行列の全て固有値の積を最大化する中継局アンテナを選択することで、最大の特性が達成できることを理論的に示した。計算機シミュレーションにより10アンテナから2アンテナを選択する場合、BER=1.0E-3点で13dBの利得が得られることを示した。 (3)アンテナ数に依存しないMIMO空間多重化XOR-PLNC: 上記とは逆に中継局アンテナ数が少ない場合にも高速化を達成する過負荷XOR-PLNCの実現法を提案した。提案法では、中軽局に空間フィルタを適用し仮想的に中継局アンテナ数を増大させる。
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