研究課題/領域番号 |
18K04146
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金谷 晴一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (40271077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バッテリーレス / インプラント / センサプラットホーム / エネルギーハーベスト / Bluetooth / フィルムアンテナ / 整流回路 / 昇圧回路 |
研究実績の概要 |
ICTやIoT技術の普及により、様々なモノがインターネットに繋がるようになっている。これらは、モノづくりの現場や日々の生活の中だけではなく、ヘルスケア、医療、農業、畜産といった分野にも着実に普及しつある。ウエアラブルデバイスやモバイルデバイスにおいては、これまで電磁誘導を用いた無線電力伝送が開発されているが、伝送距離が数cmのため、血管や胃、及び腸など、生体深部の臓器の情報を得るためのセンサに電源供給を行う手段、及び生体深部からセンシングデータをワイヤレスで取り出す新たな手段の開発が急務の課題である。体内に留置されたインプラント生体情報センサへの電源供給は、本体にバッテリーを付属しているため、センサ全体のサイズが大きく、また重量が重くなることと同時に、電池の寿命によって侵襲的な入れ替え処置が必要であり、さらに電池の成分による身体の障害を起こす可能性もある。 本研究では、市販の低周波治療機器や電気メス等から対極板やパッドを通じて生体に浸透した電磁波を、生体内で効率的に採取し、生体深部にインプラントされたバイタルセンサに無線で安定的に電力を送電し、センサの駆動と、センシングデータの無線による体外への転送を同時に可能とするバッテリーレス生体情報センサプラットホームを開発することを目的とする。 本研究の最終目的は、「バッテリーレス生体情報センサプラットホームの開発」であり、特に本開発期間内で生体深部において安定的に電力を受電する技術と、体内におけるバイタルデータを外部へワイヤレスで送信する技術」を確立する。具体的には、低周波治療機器等の標準出力を受電し、圧力センサ及び温度センサの駆動電力、および無線データ転送用電力とし、得られたバイタルデータは2.4GHz帯無線通信規格であるBluetooth回路により人体外部へ転送する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、生体深部において安定的に電力を受電する技術を確立した。 給電のために、共振・整流回路(コッククロフト・ウォルトン回路)を設計した。整流回路部を内視鏡サイズ(直径2mm, 長さ18mm)に小型化したLEDマーカーを、豚の腹腔内に留置した実績がある。本研究で用いる低周波治療機器の両極のパッドによるサンドイッチ給電により受信されるエネルギーは交流であり微弱のため、センサデバイスを駆動させるためには昇圧・整流する必要がある。そこで、直列共振回路を導入する。本回路により、周波数、コイルの値、アンテナの抵抗などにより計算された出力電圧が期待できる。直流出力部に電気二重層型スーパーキャパシタを接続し充電可能とし、圧力センサ及び温度センサの駆動電力、および無線データ転送用の電力として蓄えた。
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今後の研究の推進方策 |
得られたデータを転送するためのシステムを構築する。通信プロトコルとして、Bluetooth low engergy (BLE)を用いる。BLEは回路規模が小さいため、また、低消費電力であるため、将来のWiFiや、LPWA(Low Power Wide Area Network) 無線通信規格の1つであるLoRaWANなどへの展開が期待できる。そのためのアンテナとして、フィルムアンテナを設計するよていである。アンテナの材料としてTaconic社のフレキシブル基板を使用する。本基板は高周波特性に優れている。また、受信デバイスとしては、ノートパソコンに実装したBLE端末をもちいる。受信電力・受信感度によっては、受信タイムインターバルを最適化する必要がある。
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