研究課題/領域番号 |
18K04147
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤本 孝文 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (40264204)
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研究分担者 |
田中 俊幸 長崎大学, 工学研究科, 教授 (50202172)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 平面アンテナ / 医療応用 / 内視鏡 / ファントム / 合成開口処理 |
研究実績の概要 |
提案する電波型腹腔鏡アンテナシステムは,①高性能小型アンテナ ②信号処理法 ③実験用ファントム を作成する必要がある。また、研究を迅速に進めるために、アンテナのサイズを実スケジュールの2.5倍にしたモデルと,等倍スケールモデルを並行して研究を進めている。本年度は特に①高性能小型アンテナの設計を中心に研究を進めた。 等倍スケールモデルについては、送信アンテナ1つ、受信アンテナ1つから構成される長方形素子の平面アンテナについて、シミュレーションにより設計を行い、アンテナの試作を基板加工機により行った。送受信アンテナ間隔が非常に狭く、送受信アンテナの給電部が接触するため、シミュレーション結果と測定結果に大きな誤差が生じた。現在、給電部の構造について検討を行っている。 2.5倍スケールモデルにおいては、これまでに設計を行ってきた長方形素子の平面アンテナと、周波数帯域幅が広い特性を持つビバルディアンテナの2種類について検討を行った。血管検出精度向上のためには、送信アンテナから受信アンテナへの直達波抑制(アイソレーションの向上)が必要となる。これまでに、その抑制法として平面アンテナについては誘電体基板側面に薄い導体板を装荷する方法を提案し、本年度は引き続きその効果についてシミュレーションにより検討を行った。その結果、これまでに血管が観測できなかった深さ20㎜について血管の検知が可能であることが分かった。しかし、血管が浅い位置(15mm)にある場合に血管が検出できない現象が生じた。現在その理由について検討を行っている。 ビバルディアンテナについては、広帯域特性を持つため、長方形型平面アンテナに比べ、放射電波のパルス幅が狭いと言った利点があるが、構造上、送受信アンテナ間のアイソレーションが悪くなる。シミュレーションによる数値実験を行った結果、12.5mmまで血管検出が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、等倍スケールモデルの高性能化(アンテナ利得の向上、送受信アンテナ間のアイソレーションの向上)を図ったアンテナの設計を終了する予定であった。送受信アンテナ間のアイソレーション向上のため、誘電体基板側面に導体を装荷したアンテナを提案した。その結果、目標とする20㎜(実スケールでは8㎜)の血管が検出できたが、逆に浅い位置での血管が検知できない現象が生じた。この原因解明に向けシミュレーションにより検討を行っている。また、アンテナの大きさに比べ、給電部コネクタが大きいため、測定結果に誤差が生じる。給電部構造の再検討を行う必要がある。 ファントムについては、脂肪ファントムに関してはほぼ設計は終了している。血管ファントムに関しては、その試作品に関して再現性を検討している。 信号処理に関しては、新しい血管検出のための信号処理方法(アンテナの位置を移動し、その位置間の受信強度の差分を取る方法)の数値計算プログラムの完成予定であった。現在、プログラム開発中である。 上記のように、アンテナの設計、ファントム設計、信号処理数値計算プログラム作成に少し遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
終了年度にあたる2021年度は、アンテナのアイソレーションの向上を図るとともに、アイソレーションおよび周波数帯域幅と血管検出の精度の関係解明に向けた検討を進める。現在、アンテナについては、長方形型平面アンテナと広帯域な周波数特性を持つビバルディアンテナについて検討を行っている。平面アンテナについては、アイソレーション向上法として誘電体側面に導体を装荷する方法を提案しているが、本年度に提案するアンテナを完成させる予定である。また、ビバルディアンテナについては小型化を図り、目標とする半径10㎜の内視鏡に収まるアンテナの設計を目指す。 ファントムに関しては、血管ファントムのコーティング方法の検討を行い、にじみ抑制法の確立を目指す。 信号処理に関しては、早期にプログラム開発を修了し、測定結果を用いた数値実験を始める予定である。 最後に、試作した2種類のアンテナ(長方形型平面アンテナ、ビバルディアンテナ)、ファントム(脂肪、血管)、信号処理法を組み合わせた実験を行い、提案する電波型内視鏡アンテナシステムおよび血管検出法についての評価を行う。 特に、2種類のアンテナの結果を比較することにより、周波数帯域幅、送受信アンテナ間のアイソレーションと血管検出精度の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は研究成果の発表を行うため、交付助成金の中に旅費を計上していた。しかし、研究協力者の大学院生がCOVID-19感染拡大防止のため登校できない期間があり研究が遅れたこと、また、予定していた学会が、オンラインで開催されたことから旅費を使用しなかった。このため、次年度使用額が生じた。 本年度はアンテナおよびファントムの試作が遅れていることから、これらを中心に研究を進める予定である。また、研究成果発表として学会への参加も予定しているが、学会がオンラインで開催予定であることから、次年度使用額として生じた助成金は、アンテナ資材およびファントム材料に使用する。
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