研究課題/領域番号 |
18K04149
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
佐波 孝彦 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (60293742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ポーラ符号 / 通信路分極 |
研究実績の概要 |
本研究では,次世代無線通信の分野で注目を集めているポーラ符号について,限られた符号語長の場合に誤り訂正能力の低下を抑えられる符号化法および復号法を確立することを目的としてる。初年度は,通信路の状態に応じたビットの並び替えを用いるポーラ符号化について検討を行った.ポーラ符号は,通信路の分極特性による誤りの偏りを利用しており,符号語長が無限の場合,復号結果の各ビット位置の復号誤り率が0または0.5に二極化される。しかし有限な符号語長の場合,復号誤り率は0から0.5の間に分布してしまう。これに対して,移動体通信の通信路特性を利用して,ポーラ符号を組織符号化する手法が既に提案されている.オリジナルのポーラ符号は非組織符号として設計されているが,組織ポーラ符号では,通常のポーラ復号処理の後,再符号化することで情報ビットが復号される.この復号処理は,2回の通信路分極を行っていると考えることができる.この2回の通信路分極処理により復号誤り率が偏り,情報ビットの誤り率を低減している.しかし,本研究では組織ポーラ符号とは別のアプローチで2回の通信路分極を行う. 現在の移動体通信では,サブキャリアと呼ばれる複数の搬送波を用いてデータを並列伝送する広帯域マルチキャリア伝送が主流である.広帯域伝送では,周波数選択性フェージングの影響を受けるため,サブキャリア毎に受信電力が変動する.すなわちサブキャリア毎に誤りの分布が変動する.そこで本研究では,各サブキャリアの受信電力の分布がポーラ符号の復号誤り率の分布となるように入力ビットを並び替えることで,各ビット位置の復調誤り率の分布を通信路分極後の誤り率分布に近似させることができる.その後,ポーラ復号処理を行うことで,情報ビットは疑似的に2回の通信路分極を経る.これにより,通信路分極が強調され,ポーラ符号の復号誤り率の低減ができることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は2年目(2019年度)の計画として記載していた,半凍結ビットという概念を導入したポーラ符号についても,先取りして特性を検証し,その手法の一部を国際会議で発表した.その結果,様々な研究者からのフィードバックを得た状態であり,比較すべき対象の再考など,幾つかの問題に対応するために,更なる検討を進めている段階である.これについては,既に取り組んでおり,2019年度中には解決する見込みである.以上より,本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降は,引き続き通信路の特性に応じて入力ビットを並べ替える方式について,様々な通信路環境における凍結ビット数と並べ替え手法の組み合わせについて検証を続けるとともに,半凍結ビットを用いたポーラ符号についての研究を進める.ポーラ符号では,符号語長が無限の場合,復号結果の各ビット位置の復号誤り率が0または0.5に二極化されるが,通信路分極が十分に行われない状況では,凍結ビットを割り当てなかった(すなわち情報ビットの)ビット位置でも誤りやすいビットと誤りにくいビットが生じる.そこで,二極化されていない通信路において,情報ビットが割り当てられている入力位置のビットの中でも復号誤り率の高いビット位置の誤り率を低減する.具体的には,従来の情報ビット(復号誤り率が低いビット)と凍結ビット(復号誤り率が高いビット)という分類に対して,復号誤り率が中程度のビットという分類を新たに加え,これらのビット位置の誤りを低減するための処理を行う.本研究課題では,3つ目に分類されるビットを半凍結ビットと呼ぶ.半凍結ビットに対して符号化率1/2の任意の誤り訂正符号化を施した情報ビットを割り当てることで,有限長のポーラ符号化において誤り訂正能力低下の主な原因であった「凍結ビットではないビットの中で誤り率の高いビット」の誤り率を低減することができる.これらの効果は一部確認済みであるが,半凍結ビットに適用する誤り訂正符号の検討など,詳細に進めていく.
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