研究課題/領域番号 |
18K04153
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
福地 裕 東京理科大学, 工学部電気工学科, 准教授 (70366433)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フォトニックネットワーク / 超高速情報処理 / 先端機能デバイス / 光スイッチ / 先端的通信 |
研究実績の概要 |
光通信に関するムーアの法則によると、容量と距離の積が4年間でおおよそ10倍になるとされている。このため、基幹の光情報通信システムには、エクサビット毎秒級の超大容量性が要求されると考えられる。また、ディジタル領域でキャリア位相の推定や偏波多重分離が可能となるディジタルコヒーレント光伝送方式が継続して普及していくと考えられる。今後は、送信端と受信端を繋ぐ線としての通信から、ネットワークとしての面へ、さらにはより高度でより深いレベルの層(レイヤ)への展開が予測される。このため、高機能、超高速、広帯域に動作する様々なノード信号処理回路の研究開発が重要な技術課題の1つになると考えられる。 本研究では、理論と実験の両面から、擬似位相整合ニオブ酸リチウムアレイ光導波路の高次非線形光学効果を用いた、様々な高度全光コヒーレントシリアル・パラレル信号処理回路を創発し、超高速広帯域でスマートな光ネットワークノードの実現に向けた課題に取り組む。 計画内容は、電子計算機を用いた当該デバイスの特性解析、光ノードとしての設計論の確立、最適デバイス設計等を行う。次に、これらをもとにデバイスの試作や、基礎実験としての当該基本特性等を測定する。最後に、実証実験や総括を行い、研究成果全体を広く国内外に公表する。 昨年度に引き続き今年度も、理論と実験の両面から、当該デバイスを用いた各種の変調信号の一括増幅や雑音抑圧、チャネル交換、各種変調フォーマット変換等の課題に取り組んだ。また、これらの研究成果を国内外の学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況について、やや遅れが生じた理由は次の通りである。新型コロナウィルス感染症の影響により、当初の研究計画後半の実験や理論との比較検証、研究の総括、成果公表等に遅れが生じ、当該研究遂行のための実時間(研究計画のエフォート)も計画当初より若干低下した。具体的には、各種消耗品や最適設計の設備備品の統合作業や旅費の支出等に遅れが生じ、現時点でもこれらの遅れを完全には取り戻せていない。 以上を踏まえて今年度は、当初の研究計画の内容は変えない範囲において、さらに1年間の期間延長した研究計画を再構築することにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、次の通りである。今年度も昨年度に引き続き当初の研究計画の遅れを取り戻すべく、研究計画の後半の実証実験やシステム実験、研究の総括と公表等を中心に展開する。 具体的には、これまでの研究内容を踏まえて、理論と実験の両面から、各種の多値変調信号の一括増幅や雑音抑圧、チャネル交換、信号再生、各種変調フォーマット変換等の課題を継続する予定である。またこれらの研究成果は、全国大会や研究会、国際会議等に発表する予定である。最後に実施した研究内容全体の総括として、学術雑誌への投稿や研究室ホームページへの掲載、オープンキャンパスや各種セミナー、学会でのブース展示等、広く社会・国民にも発信したい。さらに、本研究の問題点やその改善法等を検討し、例えば産学連携や国際連携のプロジェクト等へも発展させたい。 本研究の最終目標は、高度化された新しいネットワークノードを搭載し、時間、周波数、位相という互いに直交する軸上で自在な処理や多元接続を可能とする、新世代の光情報通信システムの構築である。全ての当該信号処理回路を、同じポリシーと回路基板をベースとして設計製造することにより、コストや環境負荷の低減と同時に高速広帯域化や高機能化を図る試みは、国内外の他の研究開発機関等ではなされておらず、独創的、先駆的、持続可能であり、学術的重要性も高いと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、次の通りである。新型コロナウィルス感染症の影響を受けて、当初の研究計画の内容を変えない範囲内で、さらに1年間の期間延長した研究計画を再構築したためである。またこれに伴って、必要十分かつ適切な時期の予算執行計画についても再検討しており、翌年度への予算繰り越しが望ましいとの状況に至ったため。 今後の使用計画については、次の通りである。今回改めて再構築した研究計画に沿って、当初の研究計画の後半部の実験や理論との比較検証のための消耗品や設備備品等の準備とこれらの統合作業、ならびに得られた研究成果の発表や公表、総括等に係る予算に充当する予定である。これらの備品や消耗品等の購入は、当初の研究計画に沿ったものであり、有効に支出するものである。
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