研究実績の概要 |
従来のビーム走査アンテナは, 移相器を装着した多数の直線偏波放射素子から構成されている. 放射ビームを特定方向に向けるためには, 各放射素子からの放射界の位相を移相器によって変える必要がある. この場合, 放射ビーム方向がアンテナ正面からずれるにつれて, 利得(感度)が落ちる等の不具合が生じる. つまり, 従来の走査アンテナでは, ビーム方向が異なると, 同じアンテナ特性が再生されないという欠点があり, 特性再生可能アンテナ(RecANT)とは言えない. さらに付け加えるならば, 直線偏波放射素子を使用した通信では,「送信アンテナと受信アンテナの偏波面を同方向(平行)にしなければならない」という制約がある. これに対し, 円偏波放射素子を使用した通信では「偏波面を合わせる必要がない」ことが学術上から既に知られている. この優位性があるにもかかわらず, 円偏波走査アンテナの構築がむずかしい故に, これまでのところ, ビーム方向が変わっても同じアンテナ特性(放射パターン, 入力インピーダンスなど)を再現する円偏波用特性再生可能アンテナの実現例は皆無に近い. それ故,「新概念を構築し, 移相器を用いないで, 円偏波用特性再生可能アンテナ(RecANT)を創造することは可能であろうか?」との学術的問いが生じている現況にある. 本研究は上記の問いに答えることを目的とし, これまでに(1)円偏波メタマテリアル細胞の創造に力を注ぎ, この細胞から成る線状メタラインを考察し,基礎データを獲得してきた. そして(2)円偏波線状メタラインから成るRecANTを創造し, その特性を追求してきた. さらに(3)RecANTの表面積の縮小化をも検討してきた. 今年度(2021年度)は,取り残していた実験を完遂し,これまでに得られた全ての知見を体系化した.
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