研究課題/領域番号 |
18K04158
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
富岡 智 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40237110)
|
研究分担者 |
宮本 直樹 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00552879)
西山 修輔 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30333628)
松本 裕 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40360929)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 屈折率分布 / 三次元非接触計測 / シア干渉計 / コンピュータトモグラフィー / 非定常 |
研究実績の概要 |
本研究で目標としている非定常媒質の屈折率の三次元分布の計測システム開発は,二つのステップから構成される。第一ステップでは,測定対象に対する入射方向を変更できる干渉計を用いて,屈折率の光路に沿った線積分である位相変化画像を複数の方向から計測し,第二ステップで計算機を用いて三次元分布を再構成する。 第一ステップにおいて,一般的な物体光と参照光を干渉させる二光束干渉計は精密なアライメントが必要であり,別方向からの干渉像を取得するためのミラー等を移動による振動の影響を受けるため,高速な計測は困難である。本研究ではこの問題の解決するために,物体を通過させた後の光を二つに分け,一方を光軸断面内でシフトさせて干渉させる一光束のシア干渉計を提案しており,その有効性を示すことが課題の一つである。この干渉計はアライメント調整が容易であるが,データ処理が複雑となるのが問題となる。これは,シア干渉計から観測される干渉縞から直接求められる画像は,測定対象によりもたらされた位相変化画像ではなく,位相変化画像のシフト方向に対する空間微分画像であり,位相変化画像に戻すためには積分処理が必要となるためである。 今年度は,炎周辺の温度分布を計測するためのシア干渉計を構築し,観測方向を変える際の光学系の移動時に発生する振動に強いことを確かめた。また,断面内の平行移動量の制御方法を確立し,干渉画像から微分位相を求め,それを積分により位相変化画像を求める方法を検討し,問題点を洗い出した。さらに,干渉画像から位相を求めるためのツールとして,ディープラーニングによる方法と,位相抽出処理に必要となる高精度偏微分方程式解法を開発した。 また,第二ステップの時間変動を伴う測定対象の三次元分布の再構成については,データ取得時刻毎の重みつき再構成法の有効性をシミュレーションにより明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では,一光束干渉計を用いて測定対象に入射する物体光の入射方向を変えながら複数の位相画像を取得し,それらの位相画像をもとに計算機処理により三次元屈折率分布を再構成する。 今年度(初年度)は,一光束干渉計の構築が主な目標である。当初の予定では,物体光を二つに分け一方を平行移動させる方法として,平行基板の裏面反射を用いる方法と,その他のバックアップ手段も検討していたが,裏面反射法のみで所望の平行移動量を制御できることが判った。また,平行移動量は,当初は光学系の寸法等から理論的な算出の予定であったが,平行移動量を直接計測する方法の開発により信頼性が向上した。 また,入射方向を変える際の機械的なミラーの移動の振動が懸念されたが,実験の結果から干渉縞にはほとんど影響を与えることがないことが解かり,数秒程度で複数方向のデータ取得の可能性が高く,目標としている数秒オーダーで変化する測定へのもっとも大きな問題はクリアできたと考えている。 一光束干渉計の直接の測定結果である干渉縞画像から,複数のステップを経由し得られた空間微分位相画像が得られ,それを積分処理する必要がある。この積分には,平行移動方向(微分方法)が画像の座標軸と一致しないため,斜め方向の積分が必要となる。このとき,積分の始点は位相変化が0の点を選ぶべきであるが,斜め方向の積分のため画像の全ての端点での位相変化が0と選ぶことができない。これは当初想定していなかった新たな問題点である。現在解決策を模索中であるが,積分画像には不連続点が残ってしまっている。 一方で,当初予定していなかったディープラーニングを用いた干渉縞画像から位相変化画像の抽出にも着手し,有効であることが解かった。現時点では,一光束干渉計の干渉縞からの位相抽出ではないが,その場合でも,高精度に位相変化画像を抽出できる可能性が見えて来た。
|
今後の研究の推進方策 |
測定対象については,秒オーダーの時間変動を伴う非定常現象として,炎と大気圧プラズマを想定し,秒オーダーの時間変化を与えるための方法(電界を印加等)を検討する。 位相の抽出については,今年度,新たに問題となった位相変化画像を微分位相変化画像の積分により求める処理において,不連続部が出現する問題の解決法を検討する。また,干渉縞密度が高い場合は,微分位相変化画像の算出に大きな誤差が混入するので,これを避けるために,拘束条件つき位相アンラッピング処理を開発を開始する。さらに,ディープラーニングを用いた干渉縞から位相変化画像への直接変換を引き続き検討する。 三次元再構成処理については,測定中の瞬間的な揺らぎならびに誤差をデータの重みとして評価できる重みつき再構成を採用する。このアルゴリズムは既に完成しているが,重みについては,測定対象ごとに検討が必要である。そのために時間変動する測定対象を模擬し,シミュレーションにより重みの与えかたを検討する。再構成アルゴリズムの高速化を検討する。また,時間的な相関から瞬間的な揺らぎを除去する方法を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
必要と想定していた消耗品等の金額が異ったため。
|