本研究では,フローサイトメトリ法に基づく血液検査装置に,無染色で細胞形状のリアルタイム3次元計測が可能なディジタルホログラフィック顕微鏡を適用して,高速・高精度診断と各細胞形状の微視的観察を同時に実現し,従来の顕微鏡ではリアルタイム取得が困難な位相情報による血液細胞の3次元構造の復元および特徴抽出により,新規な血球識別・分類性能をもつ診断装置の提案とシステム構築を目的としている. 令和二年度では,最初に令和元年度のやり残しであった,いくつかの特徴パラメータの計算プログラムの作成を実施した.次に血液細胞の位相情報に基づく3次元形状の特徴パラメータを利用した,細胞識別・分類法についての研究を実施した.それぞれの形状パラメータの統計的特性を取得するために,フローセルを流れる約100個の赤血球のデータを用いた.これらの赤血球の形状に対して適用する主成分分析のプログラムを開発した.その後に,形状が大きく異なる2種の赤血球を用いて細胞識別・分類を実証する予定だったが,諸事情で入手できず実施できなかった.しかしながら,当初の目標はおおよそ達成しており,今後は上記の2種の赤血球の入手ルートを確保し,取得したデータに解析プログラムを適用することが目的となる. また,本研究で構成した装置および解析プログラムに基づき,小型・簡便・低コスト化が容易な,可搬型の装置設計を行った.使用機器は2分岐ファイバ付き半導体レーザ,対物レンズ,フローセル,小型ビームスプリッタ,CCDカメラ,注射器,ノートPCである.顕微鏡部を構成する対物レンズからCCDカメラまでの寸法はおおよそ高さ30cm×幅10cm×奥行き10cm以内であり,可搬設計が可能であることがわかった. これらの研究成果を,国際会議2件,全国大会2件,支部会1件で発表した.
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