研究課題/領域番号 |
18K04163
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大河 正志 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90213644)
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研究分担者 |
佐藤 孝 新潟大学, 自然科学系, フェロー (10143752)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 微気圧センサ / 光導波型センサ / 津波検知 |
研究実績の概要 |
誘起圧力差持続時間(以下,持続時間)の長時間化に関しては,半密閉空間にノズル(極細チューブ)を取り付け,それを長尺化することで改善を試みた。まず,ノズル径を0.06~0.4mm,ノズル長を0~2.0mmの範囲で変えて,数値流体解析を行った。解析では,半密閉空間の体積を10cm^3,流体を空気(理想気体)とし,層流条件とした。解析の結果,ノズル径が0.14mm以下の場合,持続時間がノズル長に対して線形的に増加することが分かった。これより,ノズルの長尺化による持続時間の長時間化が望めることから,PEEK樹脂チューブ(0.05,0.1mm径)を用いて,半密閉空間体積40cm^3のプロトタイプを作製し,持続時間の測定を行った。その結果,直径0.1mm,長さ10cmのPEEK樹脂チューブにおいて,持続時間322秒(5回測定の平均値)を達成できた。持続時間の違いによるセンサ出力の違いを実験的に考察するため,持続時間の短い「①小孔直径0.04mmの半密閉空間」と長い「②ノズル直径0.1mm,ノズル長10cmの半密閉空間」を用いて,エレベータの上昇・下降時のセンサ出力を測定した。2階から5階まで停止なしで上昇した時,モデル①では出力に大きな変化が見られず,一方モデル②では出力が直線的に変化した。半密閉空間の設計により,センサ特性を変えられることが実証された。 光導波型化に関しては,光導波型圧力センサと半密閉空間構造をシリコーンチューブで接続した構成とした。圧力センサのダイヤフラムについては,20mm角で,0.21mm,0.3mm厚の2種類を作製した。また,半密閉空間については,体積を10cm^3とし,小孔直径0.01,0.03,0.04mmの3種類を用意した。それぞれの組合せにおいて,圧力センサからの光強度が半密閉空間内の圧力実測値と同様の変化をし,センサの光導波型化の目処がついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトでは,まず,微気圧センサの核心部となる半密閉空間構造のステップ応答特性および周波数応答特性について考察を行う必要があった。2018年度(平成30年度)に行った数値流体解析およびプロトタイプを用いた実測により,持続時間の小孔面積依存性および半密閉空間体積依存性を明らかにした。しかし,これら依存性において,数値解析解と実測値の間に,定性的な一致は見られるものの定量的には違いが見られた。そこで,数値流体解析に乱流モデルを導入したところ,誘起圧力差持続時間の数値解析値と実測値の差が小さくなることが確認され,数値流体解析に基づいて,センサ設計を行える可能性も示唆された。また,半密閉空間は高域通過フィルタ特性を有しているが,フィルタ特性における遮断周波数と持続時間について,両者を結びつける関係式を導き出すことに成功している。2019年度(令和元年度)は,小孔に代わり,圧力抵抗のより大きい構造であるノズルを導入し,持続時間の長時間化を実現した。具体的には,直径0.1mm,長さ10cmのPEEK樹脂チューブを使って,体積40cm^3の半密閉空間を作製し,持続時間322秒を達成した。また,光導波型圧力センサと半密閉空間をシリコーンチューブで接続して,印加圧力10kPaでステップ応答を測定したところ。光導波型圧力センサの出力光強度と半密閉空間内部の圧力実測値が類似した変化を示した。 以上のように,津波検出に最低限必要となる持続時間300秒以上を達成した上で,センサの光導波型化に向けた成果を上げることができており,「(2) おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,非光学式プロトタイプを製作し,長周期圧力変化に対する抑制効果の評価を行う。本センサと市販品の絶対圧センサを共に日常の大気圧変動に晒して,センサ出力をデータロガーで長時間記録し,信号のパワースペクトルを比較することで,長周期抑制効果の考察を行う。実用への適応性を考えたとき,温度や風等の外乱の影響は避けられないため,それらの評価およびその低減策についても考察する。ノズルを使用することによる持続時間の長時間化に成功したことから,ノズル付き半密閉空間構造も研究対象に加えることとする。 センサの光導波型化に関しては,センサ感度が低く,10kPaのステップ応答特性が測れた段階で,十分な感度と言えないため,高感度化,高出力化を図る。また,持続時間の半密閉空間体積依存性や小孔面積依存性等について考察を行う。さらに,周波数特性を測定し,遮断周波数と持続時間の関係についても明らかにする。時間があれば,半密閉空間と一体化した光導波型微気圧センサを作製し,センサ動作の確認も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2019年度の研究をほぼ終えた時点での残金で,物品費として使うにも少額で,2020年度の経費に合算して使用する方が,研究遂行上有効であると判断したため。
(使用計画)少額であるため,2020年度の経費と合算して,薬品,電子部品等の購入に充てる予定である。
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