半導体レーザの注入電流を鋸歯状波変調することにより,発振光周波数を鋸歯状波変調するFMCW法をディジタルホログラフィ(DH)に導入した。これにより,不等光路のマイケルソン干渉計において得られる干渉縞(ホログラム)中に物体位置に応じた周波数を持つビート信号が生じる。まずは,原理確認のため2つの平板物体を同じ位置に置いた状態から徐々に離して行く実験を想定した数値計算を行った。計算結果より,半導体レーザの周波数変調帯域と2つの物体を弁別できる物体間距離との関係を調べた。また,同じことを実験においても確認し,物体弁別のための条件を求めた。 次に,光路長が異なる2つの参照光を使い,それぞれに直交した直線偏光を用いることで物体光の偏光状態を記録,解析する手法について研究を行った。物体として四分の一波長板を想定し,この透過光に対する偏光状態の決定を数値計算及び実験において行った。結果として,原理通り,物体光の偏光状態が記録,解析できることを確認した。 最後に,得られた原理を応用し,UV硬化型接着剤の硬化過程をFMCW-DH法にて解析する実験を行った。これは,UVLEDの照明により硬化するUV硬化接着剤の硬化過程を,透過光の偏光状態変化,位相変化などにより解析する実験である。FMCW法の原理により,繰り返し測定による長期的な硬化解析と,瞬時的な偏光解析が同時に行えることを示した。 入手できた半導体レーザの周波数変調帯域では,多層塗膜には対応できなかったが,原理的な確認及び実証実験は行え,当初目的を果たせた。これらの結果より,国内学会,国際会議で発表し,学術論文投稿を行っている。
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