研究課題/領域番号 |
18K04171
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
新田 益大 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (20453821)
|
研究分担者 |
三浦 泰人 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10718688)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ハンディ型打音検査装置 / 音紋 / 減衰時間 / 無線伝送 / コンクリート |
研究実績の概要 |
本研究では,ドローンを用いて道路インフラの打音検査を行う際に必要な技術開発を目的としている.前年度までの研究で,過大なローターブレード音に重畳する微弱な打音信号を抽出するには,独立成分分析を適用すれば良いことがわかった.さらに,3Dプリンタを用いて,ハンディ型打音検査装置の開発も行ってきた. 今年度は,まず,マイクロホンで収録した信号をPCに無線で伝送することに取り組んだ.前年度までは,データ収集デバイスを介して有線で伝送していたが,ハンディ型打音検査装置に,マイクロホンに励起電流を与える回路とデータ収集デバイスを搭載する形体となり,ケーブル長を気にしながら打音検査を行わねばならず,実用的ではなかった.そこで,マイクロホン信号をBluetoothでPCと無線で接続する方法に切り替えた.そのため,PC上でリアルタイムにマイクロホン信号を録音できるようなプログラムをC言語で開発した.この録音プログラムを数値計算ソフト上から呼び出し,前年度までに開発した音紋(時間周波数解析結果)の表示プログラムで処理したところ,有線の場合と同様の結果を得ることができた. つぎに,抽出した打音から減衰率を割り出すプログラムの開発を行った.空洞などの欠陥部では卓越周波数が存在することは前年度に判明しているが,実際の波形では,さまざまな周波数成分を含むため,ある種のうなりが生じており,打音の源波形からの減衰率の特定は困難であった.この問題を解決するため,音紋を積極的に利用することにした.音紋は,短時間Fourier変換を用いるため,時間分解能と周波数分解能がデータ長に依存する可変パラメータとなる.このとき,卓越周波数が存在すれば,ある周波数ビンにエネルギーが集中するため,その周辺のエネルギー減衰を捕らえれば良いことになる.この方法では減衰率ではなく,減衰時間となるが,同義であるため一定の成果は得られた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたマルチファンクション再構成可能入出力デバイスが,購入できなかったため,FPGAを搭載したハンディ型打音検査装置を開発することができず,代替案として,PCにマイクロホンで収録した信号を無線伝送して,評価することとなった. この構成で,名古屋大学橋梁長寿命化推進室のN2U-BRIDGEにある壁面空洞供試体において打音検査を実施する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の拡大のため,それには至っていない. また,減衰率(減衰時間)が空洞の深さに関係するのか広さに関係するのかの実験も実施できていないので,明白でなく,検査結果をどのように与えれば良いかを検討する必要性が生じている.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究で,コンクリートに空洞があれば,打音は卓越周波数を有する清音となることが判明し,また,3箇所の人工欠陥がある標準供試体で事前に行った打音検査では,それぞれの卓越周波数と減衰率が異なることも判っている.一方で,本研究課題では,内部欠陥の広がり(範囲)を打音から定量的に評価することを目的としており,そのためには,実際に答えがわかっているN2U-BRIDGEの壁面空洞供試体での打音検査を行い,どのような相関があるのかを調査する必要がある. さらに,開発したハンディ型打音検査装置をドローンに搭載し,実橋梁の点検に適用して有効性を確認することも残された課題である.これに関しては,戦略的イノベーション創造プログラムのインフラ維持管理・更新・マネジメント技術で再委託研究を行ったときの,委託元企業がポール型ドローンを新たに開発しており,それにハンディ型打音検査装置を搭載してもらい,検証する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により,当初予定していた名古屋大学橋梁長寿命化推進室のN2U-BRIDGEにおける検証実験およびドローンを用いた実証実験が困難になったため,次年度使用額が生じた. そこで,研究期間を1年延長し,上述の検証実験および実証実験を行うため,主として名古屋大学や実証実験先までの旅費として使用する予定である.
|